2009年1月4日日曜日

読書は1冊のノートにまとめなさい(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)

著者:奥野宣之 出版社:ナナ・コーポレート・コミュニケーション 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 100円ノートを活用したインストール・リーディングを提唱する。「早読み」が提唱される中で何を読んで何を内面に蓄積したのかを重視する著者独自の読み方だが、書籍がこれだけ多数出版されれば、確実に読書活動を自分に役立てようというニーズも多いと推定される。100円ノートと鉛筆だけではじめることができ、さらにテキストデータで索引をつけるというのは前作と同じコンセプト。整理にあまり時間やお金はかけないが自分自身で使いやすい方法を考え出す…という著者のコンセプトは一貫している。個人的には「探書リスト」や「レファレンスブック」の活用というのが取り込みやすいアイデアだった。またテーマやキーワードを簡単にメモをつけて情報収集に役立てるという方法も簡単だし、しかも役立ちそうだ。
 著者は業界紙の記者というが、色々な創意工夫がみられておそらく記事なども相当に書き込まれている方ではなかろうか。読書方法にしても情報の整理にしても、実務をしっかりこなしながら、コストをおさえて自分自身で使いやすいように工夫していく…という姿勢が垣間見えてビジネスパーソンには非常に真似がしやすいのが印象的。おそらく前作のヒットもそうした「取り込みやすさ」が読者に受けた結果ではなかろうか。

口コミ伝染病(フォレスト出版)

著者:神田昌典 出版社:フォレスト出版 発行年:2001年
 「口コミ」が注目されて久しいが、意図的に口コミを作り出そうとしてそれに成功した事例はやはり少ない。多少は口コミというのもあるが最終的には実際に現物をとってみてそれから考える…というケースがほとんどだ。現在ではハイテク機器や家電などではパソコン雑誌や価格.comなどがあるが、「伝染性の高いツール」というのは案外この本で紹介されているようなオリジナルでしかもwordなどは使用していない手づくり的なパンフのほうかもしれない。パーソナルな情報を入れてニュースレターを作成していくという方法は確かに使えそうなのだが個人情報保護の観点からあまり大量に配布されても困る…という社員も少なからずいるはずで、そのあたりの調整は難しそうだ。ただこれまでの既存のマーケティング方式とは異なり、商品企画の段階で「集団で話しやすい商品かどうか」「マスコミが取り上げやすい商品かどうか」といった視点が盛り込まれるのは確か。期待度を低くして現実の驚きを演出するなどといった「落差」の効果も確かにありそうだ。「見てくれは非常にみすぼらしくてアナログなのに使ってみるとどんなハイテク製品よりも使いやすい…」といった落差などは口コミの一つの要因になるかもしれない。マルコム・グラッドウェルの著作や「チーズはどこに消えた?」などが参考文献として挙げられており、この本をきっかけにそうした参考文献にも手を広げてみるのも悪くはない。

誘拐症候群(双葉社)

著者:貫井徳郎 出版社:双葉社 発行年:2001年
 もともとは1998年に単行本として発刊されたものなので小説にはダイヤルアップでネットワークに接続するシーンやプロバイダの会員履歴が閲覧できるシステムなどが出てくる。もちろん現在はこうしたことは不可能だし、もしありうるとすればSNSのごく一部の加入者だろう(SNSであっても正直に実名や住所を掲載しているケースはごくごく稀だ)。犯人は最初から明らかにされているのだがその逮捕に至るまでの流れは、現在だともう少し変化してくるかもしれない。またネットで個人情報を収集するというのもかなり難しい時代にはなってきているのでスパイウェアなどにも通じているプログラミングの知識や実務経験がある人間などが犯人像として浮かび上がってくることだろう。またハードディスクのデータ削除も現在ではフリーウェアで相当高度になってきているので、これも技術の進化が1998年からわずか10年で相当に高度になったという実感がわく。いずれはアイデアはそのままにさらに発展させていくと面白いミステリーということになるのだろう。しかしこの頃の双葉社は本当に実験的な作品を連続して出版している。篠田節子の名作「ゴサインタン」も直木賞受賞前の作品だが双葉社から発行されており、現在も双葉文庫から発刊。当時の双葉社にはやはり文藝に関する何か秘めた思いがミステリーなどのジャンルを問わず社内に醸成されていたのかもしれない。

失踪症候群(双葉社)

著者:貫井徳郎 出版社:双葉社 発行年:1998年
 若者たちの謎の失踪事件が相次ぎ発生。表立って動けない警察の代わりに特殊の外部組織が真相を探る…。住民基本台帳法が改正される前の話で、現在はたしかそう簡単には閲覧ができなくなっているという事情や戸籍の附表についても行政書士試験などでかなり出題されたのである程度戸籍法や住民基本台帳法を学習した人には常識化しているだろう。いずれも個人情報保護法がまだ制定されていない時代だが、今だったらもっとこの「ミステリー」を解読するのには時間がかかったかもしれない。ただ一つ問題は戸籍法についての解釈だが、法律の趣旨からするとこのミステリーに言及してあるような「方法」が本当に違法でないかどうかはちょっと難しい。明文の規定は確かにないが、身分関係を確定するための法律なのにそれを崩壊させかねないような「方法」が明文の規定がないからといって違法ではない…ということにはならないのではないか。公文書偽造など別の要件にてらして刑事告訴することは十分可能ではないか…というのが個人的な疑問。ただし法律的な解釈や2009年時点での法制度などはあまりこの本を読むときには重要な要素ではない。あくまでも1990年代初頭という時代の設定枠さえしっかりしていれば、けっしてこの本を読む上でなんの瑕疵にもならないような疑問である。
あ、なおライブハウスが物語の中に登場してくるが、描写されているような「礼儀知らずのバンド」というのは今ではどこであろうと即刻出入り禁止になるほか、路上のコンサートそのほかも現在では東京都の許可が必要ということで、それほどの礼儀知らずは演奏もできないシステムになっている。これも時代の変化ゆえか。

イラスト版管理職心得(日本経済新聞社)

著者:大野潔 出版社:日本経済新聞社 発行年:2005年
 もともとは1994年に発行された単行本に加筆・修正をして文庫本化した書籍。したがって読んでいるうちに「なんだかこれはちょっと…」と思ったのは時代の変化かもしれない。職場環境も経済環境もだいぶ変化して、「集団の納得」とか「変化」とかそうしたことは一種常識化してしまった時代なのでやや古い印象も。環境の変化に対応するのが大事だとすれば、もう少しこの文庫本の内容も時代の変化を反映すべきだったのかもしれない。2005年と2008年でもだいぶ状況は異なっているし、2008年と2009年1月でも経済環境は大きく違う。時代の雰囲気は一気に悪化し、昨年の1月と2009年の1月はわづか1年しか違うものの世相の雰囲気はまるで違う。来年の今頃は自由民主党が野党になっている可能性もあるという状況では、目標管理システムとか目標をつなげるとはいっても、その大前提である「時代の変化」に大きな動きがあると目標そのもののリンクや優先度なども柔軟に変更しなくてはならないだろう。とはいえイラストや豊富な書式などの参考資料は文庫本にしてはかなりの充実をみせているし、本来はもっと大きく改訂バージョンを出したかったのかもしれないが、それこそそうした改訂版を出すにも時間との問題やコストの問題もでてくる。イラストを新たに書き起こす手間というのは案外コストがかかるものだから、これはこれで1994年、2005年そして2009年に普遍的なテーマを読者が自分自身で見つけ出して活用していくべきビジネス書なのだろう。

2009年1月3日土曜日

SとM(幻冬舎)

著者:鹿島茂 出版社:幻冬舎 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
 新書ブームというが、手軽に持ち運びができて深い世界への入り口をコンパクトに紹介してくれるこの新書サイズの大量の発行ブーム、個人的にはかなり嬉しい。いきなり単行本から知らない世界へ本格的に入り込むよりも数々のテーマを簡潔に俯瞰してくれる新書があると著者の世界観なりテーマなりが数時間で学習できる。この書籍も締め切りまで時間が少ないということで、著者が口述したものをリライト、最後に再び著者が赤字を入れて完成したという手順だが、いわば講義をまとまった形でコンパクトにしてくれたようなものなので非常に面白い内容が凝縮されている。寄り道などもあったり、重複する話もあるのだが、それも講義形式と考えれば違和感はない。キリスト教徒はMばかりとか、支配力の強い人間がSではないとかマルキ・ド・サドが近代の始まりだとか、面白い話が満載。人文科学系の本だが読んでいるうちに社会科学にも通じる社会観などもかいまみえてくる。特に中世の人々はポーションを共同体に尽くす必要があったが市民革命のあとは自分自身のためにポーションを奪い合うという分析が興味深かった。個人的にはポーションとはいわば「持分」「残余財産請求権みたいなもの」というイメージで読んでいたのだが、限られた経済資源を市民革命後の市民が取り合えば当然「闘争状態」になる。共同体というものも必要な面がある…といろいろ思考が膨らむ。専門家にとってはこうした新書の内容は「あたりまえのこと」なのかもしれないが、「市民」の立場からするとこうした議論を新書サイズ192ページで学べるのは嬉しい時代。最初の1ページから最後まで一気に読み通せる面白さだ。

2009年1月1日木曜日

ビジネスマンのための「発見力」養成講座(Discover)

著者:小宮山一慶 出版社:株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 発行年:2007年 評価:☆☆☆
 ディスカバー携書の012番。扱っている材料やテーマはPPMなど古典的手法が多いのだが、PPM一つにしても小林製薬と花王の社風を比較したり、マズローの欲求五段階説に具体的な商品・サービスの購入をあげたりと、具体例を豊富に挙げることがわかりやすさにつながっているのが印象的。一つのデータから「点」「線」「立体」と関連付けでどんどん深みを与えていく手法の説明もわかりやすい。「発見力」というのは著者の造語と思われるが、本書122ページあたりの文章からすると「ビジネスマン」の中でも企画や創造的な仕事に役立つことを念頭において書かれた本と想定される。149ページの「一部を取り替える」というのも具体的で実行しやすい。個人的にはパソコンのHDDの中のファイルやフォルダを定期的に入れ替えたり、削除しているがそのたびごとにフォルダのネーミングやファイルの並び、さらに本当に必要なデータかどうかといった検討を加えるので、最終的に整理をしながら一つの秩序ができあがっていくことになる。これもまた現実世界のキャビネットの一部の入れ替えだけではなく、パソコンデータの一部を入れ替えることも同じなのだとなんだか納得。非常に面白いし、電車の中でも読みやすい「新書サイズ」なのだが、テキスト部分がほとんどなのに価格設定が定価1,000円はちょっと高いかな、という印象。マーケティング的にいうと他の新書シリーズは1,000円を切っているのに、この「携書」シリーズはそのそれぞれの単価(P)が異常に高い。表紙のカバーも白と黒の1色で造本になにか特殊な原価が発生するという造りでもないので価格設定は今後ぜひとも見直しをお願いしたいもの。