2010年5月31日月曜日

「感情の整理」が上手い人下手な人(新講社)

著者:和田秀樹 出版社:新講社 発行年:2007年 本体価格:857円
 「不機嫌な人」がいかに損をするのか、いかにして感情の安定化を図るべきか…といったスキルを伝授してくれる本。人間だから感情の「波」は当然あるが、これがあまりに起伏が激しいとたいていの組織ではだんだんまともに話す相手はいなくなるもの。自分自身のガードを固めず、なるべく気楽に過ごしていくライフスタイルが精神衛生上も人間関係上も「ラク」。生き方や思考力、意思決定の選択肢などの幅もどんどん狭くなるのをいかに防止するべきかという実務的な考え方はやはり大事。人間の性格はさほど変えられないが、しかし努力して意思決定の幅を広くしたり、早くしたり、より適正な方向にもっていくことは可能だ。中高年になってもしなやかに成長していくスキルをいかに自分自身で意識して取り入れていくべきかといった考え方も重要なことではないかと思う。

2010年5月30日日曜日

残念な人の思考法(日本経済新聞出版社)

著者:山崎将志 出版社:日本経済新聞出版社 発行年:2010年 本体価格:850円
 日経プレミアシリーズから出版された新刊。「塗り絵」とセグメンテーションを対比したり、エンプロイアビリティの説明やアウディのブランドイメージなどの説明が面白い。どちらかというと大きなモデルを示すというよりも、詳細設計をするのに向いている内容だと思った。「機能」で競争してはいけないという面白い指摘もあるので価格分の内容はあると思う。ただ日経新書とこのプレミアシリーズ、なんだかよく区別がつかないので、単行本にするような内容を新書で出版した…ということなのか、あるいは内容が高度なのかどういう基準で商品群を分類しているのかが不明だ。シリーズの全体像が不明だと個別の商品のイメージも薄くなる。PHP新書から出ていてもおかしくはない内容というあたりが、シリーズ全体の特徴をなくし、ひいては個別の書籍の印象も薄くする。
 新書サイズのいろいろなシリーズが出ている中、「まとまりのなさ」ではこの「日経プレミアシリーズ」のちょっと大き目の新書サイズこそが、「考え方」と「前提条件」がはっきりしない。もう少し書棚に並べた印象や読者が選択しやすいラインナップを編集サイドで考えてほしいものだが…

2010年5月29日土曜日

贖罪の日(講談社)

著者:クリス・ムーニー 出版社:講談社 発行年:2008年 本体価格:781円
 科学捜査官ダービー・マコーミックは15歳のとき(1984年)、友人が殺害された事件に遭遇、その23年後の2007年に女子高生誘拐事件に遭遇。ボストン市警の事件担当者となる。最初から最後まで憂鬱な雰囲気が立ちこめ、10代の思い出あるいはフラッシュバックに苦しみながら、38歳の女性捜査官が重大な事件に立ち向かう…。「あのとき生き延びられたのだから今回も生き延びられるはず」という前向きな思考を言い聞かせる場面とラスト(これぞ衝撃のラスト)が感慨深い。一見何の関係もない被害者の特徴もラストの種明かしで「関係がなさそうに見える点がまさしく犯人の狙い」だったとわかる秀逸なミステリーとなっている。登場人物の心理描写も見事だし、真犯人も途中でわからなくはないのだが、それを上回る「種明かし」の仕組みも見事。そしてまた派手なアクションや爆発シーンも盛り込まれ、アンジョリーナ・ジョリーあたりが主演で映画化すればさぞかし面白い映画になるであろうことは間違いない。苦痛をベースに、一点の「希望」。続編はアメリカではすでに刊行されているらしいが、日本ではまだ翻訳されていない。この続編、本当に楽しみである。

2010年5月27日木曜日

日本の大問題が面白いほど解ける本(光文社新書)

著者:高橋洋一 出版社:光文社 発行年:2010年 本体価格:740円 評価:☆☆☆☆
 新書シリーズの中でも個人的にはやはり光文社新書、かなり充実したラインナップではないかと思う。特に経済・金融系統の名作・佳作が多い。この本も元財務省のキャリアである高橋洋一氏が、周波数オークションや中小企業金融円滑法などについてわかりやすく解説。日本の失業率がやや低めにみえる背景として雇用調整助成金の強化があるなど、やはり行政の裏側に通じている面を発揮。なかなか新聞や雑誌などでは目にすることができない解説を読むことができる。デフレが円高を招く理由についても、グラフなどを用いず高橋氏一流の文章のみで解読してくれる。これ、グラフで考えることが苦手な人にはオススメだ。デフレは貨幣の購買力が上がるわけだから、その分、貨幣の「値段」も高くなる、その結果輸出産業が打撃を受けるが輸入産業が恩恵を受けるメリットもある…というような展開。単純にいい、悪いでは整理できない問題については価値観、哲学、理念の問題としてきっちり区分して書かれているのでそれも読者にはありがたい。

2010年5月25日火曜日

隣の家の少女(扶桑社)

著者:ジャック・ケッチャム 出版社:扶桑社 発行年:1998年 本体価格:686円
 1958年。まだ10代だった「私」を41歳の「私」が回顧する。隣の家に引き取られてきた美少女メグとの出会いから始まる惨劇。これ映画化されるらしいのだが、はたして主役を誰がやるのだろうか…。途中から微妙な不協和音がかもし出され、ラスト間際では吐き気すら覚えるほどの描写が続く。「私」の心がどこか破壊されてしまったのは間違いなく、平凡にすごしてきたかのように思える人生そのものがすでに終わっている。
 スティーブン・キングがこの作品を高く評価しているというその理由が実はよくわからない。10代や20代前半を奇妙に美しく描写するのが青春マンガや青春映画の常套手段だが実際にはそれほど美しくはない10代の「陰」ともいうべき断面がある。その断面を拡大していくと確かにこういう作品に仕上がるが…。この作品はまだ携帯電話も残虐な「ゲーム」(RPG)も存在しない時代を描写している。おそらくコンテンツの残虐さが実在の青少年に与える悪影響というのは実際にはほとんどないだろう。人間が抱え持っている邪悪さを自分自身が認識することによって、初めて人間は「悪」と「善」を区別して行動することができる。健全な社会人とはおそらく「地獄」と「天国」の両方を知り、自分自身で「選択」できる人間だ。こういう本がもしかすると将来は読めなくなる時代もくるかも知れず、そしてそういう時代こそ本当の「悪」が日常生活にしのびよってくる予感がする…。

2010年5月24日月曜日

まず、ルールを破れ(日本経済新聞社)

著者:マーカス・バッキンガム&カート・コフマン 出版社:日本経済新聞社 発行年:2000年 本体価格:1600円 評価:☆☆☆☆
 なぜこの本が「優れたリーダーシップ論」として賞賛されているのか購入した当初はまったくわからなかった。「強みをいかせ」「優位とはなにか」という問いかけは自明の理だと思っていたからでもある。また状況に応じて理想の指導者像が変化するのも自分自身では当然のことだと思っていた。そして年数が経過し、今あらためて読み直してみるとやはり多くの人がこの本を賞賛する理由のいくつかがわかるような気がする。一定の規律もしくは規範はあるわけだが、その規範枠のなかで相手の特性を見抜き、その強みを最大化しようとするリーダーは「ルール」(公式)に縛られない。自由奔放に組織を活性化しようとするその手法こそがこの本のテーマであり、そうすると、「そうしたカンガエ」だけを抜き出して応用していくのは読者それぞれがおかれた状況そのものによる。タイトルだけみると「ああ、よくある常識打破ね」と早合点しそうだが、実際には「自由闊達」に強みを引き出す手法をなるべく一般化していこうという著者の努力がタイトルになっていることがわかる。名著だとは思うが、しかし完全明快な結論には当然ならない。結論はけっきょく読者自身がそれぞれ現実の場面で見出していくことになるのだろう。

2010年5月22日土曜日

財務会計講義 第11版(中央経済社)

著者:桜井久勝 出版社:中央経済社 発行年:2010年 本体価格:4000円 評価:☆☆☆☆☆
 1994年に初版がでて2010年に第11版。現在簿記会計の基本書といってももはや10冊以下程度に絞られてくるだろうが、その中でもオススメはやはりこの本。第11版は第10版にさらに磨きをかけたわかりやすさ。基本書の中には数ページだけちょっと手を加えて「第○版」といたずらに版を重ねるケースもあるが、この桜井先生の基本書はそんな手抜きなどせず、毎年毎年、「これでもか」というぐらい文章や内容に磨きがかかる。初版と比較してみるとわかるが、改訂の領域を超えて「書き直し」に近い改訂もある。
 これだけ制度会計が毎年のように変化する時代に、丹念にそれをおいかけて改訂してくれる基本書の存在はありがたい。値段は4000円と、他の会計学入門の書籍と比較するとやや高めだが、それを上回るメリットを読者に与えてくれるだろう。テクニカルな説明に終始する受験本がでまわるなかで、会計基準や会計理論にねざした著者の懇切丁寧な解説は、2010年の会計本の中でも特に光る存在だ。