2012年12月2日日曜日

映画道楽(角川書店)

著者:鈴木敏夫 出版社:角川書店 発行年:2012年 本体価格:514円
 スタジオ・ジブリの鈴木プロデューサーによる映画評論。片岡千恵蔵や市川雷蔵などの個人的な「映画体験記」と第2部映画製作編、第3部映画宣伝編、第4部映画企画編に分かれる。
 意外に映画製作にまつわるあれこれが面白く、手書きで書かれた工程表などが、読んでいる自分にとっても参考になることが多い。複数の人間が集まって一定の日時までに一つの作品にしていくわけだから、どうしても日程は不足していくと思われる。がそれをシンプルに手書きでまとめてしまうあたりが、今のディジタルな時代とは違う重みを感じる(ディジタル時代だとPERT図に相当するものになるのだろう)。
 企業とのタイアップ秘話なども公開されており、これも各企業の広告宣伝部との駆け引きがすさまじい。作品によってはタイアップの「タ」の字もでてこない場合もあるが、こうした「引き」の強さもスタジオ・ジブリというブランドによるものか。ヒーローと「強い」「弱い」の2つの特性で分類して、あえて「弱いヒーローが必要なのでは」と提言するあたりがやはり時代の先をみすえるプロデューサー独特の視点か。
 「格差社会」で「弱い」っていうとやはり、「フリーター」や「ニート」っていうことになるが、まあたとえていえば「炎のフリーター」とか「沈黙のニート」みたいなタイトルで、国際的陰謀組織の謀略を骨抜きにしてくというような映画になるのかもしれないが、そういう映画って「画面」で演出するのは難しそう。拳銃やらミサイルやらアクションやらに頼らない映画が大多数に支持されるっていうのはやはり今の時代スタジオ・ジブリに期待するしかないのかもしれない。

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