2012年12月16日日曜日

リ・ポジショニング戦略(翔泳社)

著者:ジャック・トラウト、スティーブ・リブキン 出版社:翔泳社 発行年:2010年 本体価格:1,680円
 ポジショニングという用語はマーケティングではもう当たり前のように用いられているが、消費者の頭に「意識付ける」という意味でポジショニング戦略を提唱したのは、このジャック・トラウトということになるようだ。「ポジショニング戦略」という本も非常に面白かったが、この「リ・ポジショニング戦略」も面白い。業界2位や3位の企業が1位にとってかわるにはどうすればよいか、という読み方もできるし、新規参入をいかに阻止して利益を確保するべきか、という読み方もできる。また企業戦略ではなく、個人が独自性をいかしていかに今後生き残れば良いか、という読み方すらできる。
 潜在顧客の頭のなかのイメージをいかに上書き保存してもらうか、がリ・ポジショニング戦略なので、「この大事業は、やはり大事業向きのA君だな」というイメージが既定路線だとすると、リ・ポジショニング戦略で「いやいやB君の登用もありうるな」というイメージの上書き保存への変更も可能、ということになる。まあ「本来の位置に回帰する」(=無理しないで自分の本来の特徴をアピールする)というのが一番無難だが、それだけではやはり今後は生き残れないかもしれない。いみじくも著者は「進化が重要」という指摘もしている(58ページ)。これは個人レベルでいえばスキルアップなどに相当するだろう。ポジショニングを小刻みに上書きしていくのは、企業レベルでも個人レベルでも非常に難しい技のようだ。
 既存の商品に新しい用途をみつける、や「人の心はかえづらい」といった解説は,リ・ポジショニングの難しさを物語る。ただ、イメージを上書き保存することが「可能」だし、「必要」というのは、いたずらに諦めるよりもずっと前向きの発想ではあるまいか。なんだか世の中企業も個人も元気がでない世相だけれど、少なくとも対策は可能で後はその対策の方向性の問題だとすれば、この本、マーケティングの本のみならずさらにほかの読み方もできそうである。

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