2011年3月13日日曜日

たまたま(ダイヤモンド社)

著者:レナード・ムロディナウ 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2009年 本体価格:2000円 評価:☆☆☆☆
さして高い本でもなく、読みにくい文体でもなく…とずっと積んでおくだけだったのだがつい最近手に取り始めて一気に読み終わってしまった本。内容は統計学の本というべきか。「偶然」を読み解いていこうというこの本は「何も法則がないところに法則を読み解いてしまうリスク」を指摘する。ランダムというのが実は直感に反しているケースが案外多いこと(たとえば厳しくしかると飛行士の成績が一時的に良くなることや映画の大ヒットは続かないことなど)などを実例をあげて示し、「平均回帰」という概念で理論的に説明していく。またそれっぽい話にだまされやすい人間の「カン」や可用性バイアス、DNA判定の精度。そして統計学の歴史を切り開いたカルダーノ(標本空間という概念)、モンティホール問題、ガリレオのギャンブル論、パスカルの三角形、期待値、モンテカルロ法、ベルヌーイ、トーマス・ベイズの条件付確率、ラプラス、標本と誤差、ワインの格付け、標本標準偏差、近代統計学の父ケトレー、ポアンカレ、カイ2乗検定と一般的な統計学の入門が続き、最後に「ランダム」「偶然」をコントロールできる錯覚について取り扱う。289ページにはバタフライエフェクトも登場してくるが統計学の進歩は進歩としてわかりやすく説明したあと、今度はその統計学の落とし穴を指摘するという構造に。ビル・ゲイツやブルース・ウィリスの人生なども分析されていたりするが統計学の実力をある程度正確に理解し、そしてその限界を知ることができるという点で画期的な本であろうと思う。統計学を知らなくてもこの本を入門書代わりに勉強することも可能だろう。

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