2011年3月9日水曜日

改革の経済学(ダイヤモンド社)

著者:若田部昌澄 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2005年 本体価格:2200円 評価:☆☆☆☆☆
名著であることがわかっているのに、また非常に面白い内容であることもうすうす察しているのにもかかわらず、なかなか読み始めない本がある。この本も本棚に5年以上も眠っていてつい最近最初の数ページを読み始めたら一気に読み終えてしまった。歴史を通して今を分析するというスタイルの著者は、昭和恐慌ごろのマスコミや経済学者の行動を分析。デフレ不況の2005年前後の論壇と比較する。また金本位制への旧平価復帰を断行した井上準之助の金融政策を批判し、デフレ脱却に向けては金融政策と財政政策の協調が重要であることを指摘。いまだにデフレから脱却できていない日本は2005年以降も金融と財政がちぐはぐなまま、さらにはインフレターゲットも実行しないまま6年が経過したことがわかる。ドーマーの政府債務が増加しても名目経済成長率がそれを上回っていれば大丈夫という議論をもとに財政破綻の可能性を探る議論なども面白い。将来の課税徴収権も財政破綻をふせぐ「資産」であるという指摘も悪質な国家財政破綻論を論破するのには必要な視点だろう。内容は濃いのだが不必要な数式などはまったくでこず、さらにはマクロ経済学の基礎的な手法で複雑な経済状況を読み解いてくれる内容構成はすごい。雑誌に連載された記事をもとにして作成された書籍だが、編集者の力量もかなりのものではないかと思う。

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