2017年11月15日水曜日

「おそろしいビッグデータ」



出版社:朝日新聞出版 著者:山本龍彦 発行年:2017年 本体価格:720円  「ビッグデータ」の威力はすさまじい。Amazonの買物やYahooのお勧めニュースなどで日々それを実感する。便利な反面,そこに薄気味悪さもある。ある種類のアルゴリズムで商品を選定して呈示したり,ニュースを選別して配信しているわけだが,そのアルゴリズムを少し変更するだけで個人が特定されたり,就職や住宅ローンの融資条件に転用することができるかもしれない…。 情報科学の視点よりも著者は憲法13条の理念から,ビッグデータの「おそろしさ」を説明してくれている。アメリカやEUの現在の状況についても情報を入手できるので,「お得な新書」だといえる。なにより憲法など日常生活には関係ないと考えている一般人にとっても,あらためて憲法13条について理解を深める良いきっかけになるだろう。 「情報化社会」とは,情報そのものが金銭価値をもつ時代である。とすれば巨大な情報の集積である「ビッグデータ」はとてつもない金銭価値をもつと同時に,「悪」が入り込む余地が多々ある電脳空間といえる。「小人」である一般人には巨大な悪はなかなか見ることや認識することができない。だからこそこうした新書で,自らのリスク感覚を研ぎ澄まし,目の前にある危機について肌身で感じることが大切になる。
 で,この著者がNHKの夕方の番組で,「個人情報活用派」と「保護派」に番組構成上やむなく色分けされて出演しているのを拝見した(厳密には,保護とりわけ憲法13条に配慮した保護が確立されたうえで個人情報を活用していこう…というのが著者の主張であって,全部が全部保護がすべてという主張ではない)。本書でも紹介されている考え方だが,アカウント名をタグにすれば匿名加工された個人情報であっても,個人を特定することがいとも簡単にできるという現状について紹介されていた。
 便利なことはもちろん便利なビッグデータだが,場合によっては近代国家の原理の一つである個人の尊重がないがしろにされるという指摘については,もっと政府も,そして情報科学や理系の人間は考えてもよい頃だと思う。



















0 件のコメント: