2011年6月27日月曜日

ダメになる会社(筑摩書籍)

著者:高橋伸夫 出版社:筑摩書房 発行年:2010年 本体価格:740円
「企業はなぜ転落するのか?」という副題がついているが、結論は最初に明示されており、「ちゃんとした経営者を選ぶこと」、である。例示としてフランシス・フォード・コッポラの「タッカー」という映画が紹介されているのだが、この「タッカー」(実はこれはかなりの名作である)が株式会社の本質を表しているストーリーで、公開当時は私もこの映画は見ていたが、株式会社というよりもストーリーを解体していくコッポラの手腕に感動していた。筋違いの映画鑑賞だったのかもしれないが、この本で「筋」は「株式会社のありかた」「アメリカンドリーム」といったありきたりな、しかしなかなか実現できない具体的なものに結びついた。「まともな人」というのは「資本主義的な人間」(倫理性を含む)という意味で著者は用いている。単なるお人よしでは経営がつとまらないのは素人でもよくわかるが、「資本主義的にいい人」というのは、自ら責任をとるという精神や自己犠牲、倫理規範などをもちあわせているという意味であって、そう簡単にみつかるわけない。つか、自分自身も「禁欲的じゃないし…倫理的でもないし…」と「よくない部分」を書き上げることができる。そうそういるわけでもない人材を、どこからか(社内など)発掘し、すえるべきポジションでしかるべき仕事をする。会社法そのほかではそうした人間が経営の意思決定をするようにシステム化されているわけだから、そのように機能するように株主総会を機能させればよい…。結論は単純だが、結論を実現させるプロセスがかなり複雑だ。そこで著者はこの本で黎明期のアメリカの鉄道会社、バーリーとミーンズの有名な命題(所有と経営の分離)などを材料にプロセスを論じてくれる。なお個人的には会社更生法を申請したヤオハンのケーススタディが非常に興味深い(154ページ)。株式会社の機関設計の歴史などの学習にも有用だろう。

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