2013年7月29日月曜日

多読術(筑摩書房)

著者:松岡正剛 出版社:筑摩書房 発行年:2009年 本体価格:800円
 2009年の初版4刷の書籍だが、この本が水道橋にある丸善の書棚に新刊とまざって棚差しになっていた。手にとってみるとなんだか面白い。そしてこの1冊の本を読んでいくうちに、自分がこれまで読んできた本の記憶が次々と連想されていくという妙な気分を味わうことになる。それはもしかすると千代田区にある富士見ヶ丘教会という自分自身もよくみる教会の話がでてきたり、舞台で証明をやりたかったという筆者の経験に親近感をいだいたせいかもしれない。あくまで個人的な筆者の体験や考え方が、そのまま自分の頭の中にコピーされて、さらにそこから色々な書籍にハイパーリンクが貼られていく感覚だ。一冊一冊を丹念に読み解くだけが読書ではない、速読が精読よりも「読む」ことに近い‥といった趣旨の話が書いてあるのを読むと、普段から「書籍ってインターネットに似ている部分があるなあ」と感じていたことがそのまま文章化されているような気持ちがする。いわゆるビジネスパーソン向けの「読書法」とは対極的な内容ではあるが、逆にビジネスに関連づけてこの本を読むことだって可能だ。
 この本で特に注目というと、やはり98ページから展開されている「編集工学」の著者自らの解説だろう。「意味の交換」のためにおこなわれる編集行為がコミュニケーションだ、とし、そこからマッピングや年表の作成といった具体的な話にまで著述が広がるが、ここまで壮大な話をコンパクトに98ページから119ページという約20ページに「編集」して文章を書いてくれているのだから、この新書という形態と著者の力量、そして筑摩書房の編集者の感性がすごい。

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