著者名 ;草間俊介・畑村洋太郎 発行年(西暦);2005 出版社;文藝春秋
主に東京大学工学部の学生に向けて開催された講義のダイジェスト版である。人生の設計編ということでお金や結婚、就職などについて一般的なモデルが提示されている。
8割がたは講師のいうとおりだとは思うがこうしたモデル型の書籍は逆に「型」にはまった社会人をまた作り出す可能性があることも指摘しておきたい。多種多様な人材を輩出するべき国家的役割を東京大学は担っているはずだし、だからこそ多額の予算や豊富な研究設備を抱えることができている。独立行政法人になっても卒業生が財務省や文部科学省に在籍している以上、母校に不利な予算設定はしないだろう。したがって営利目的のビジネスパーソンや研究者以外にも、地道な人文科学や基礎科学の研究にいそしむ人材もこの学部の社会的使命であり、それは社会的成功とはおそらく無縁ではあるが応用科学へ続く研究の成果を生み出すという意味で愛国的研究心だともいえる。
これからはいわゆる組織型マネジメントのたけた人材ではなく、ある種の差別化された能力が見直されている時代でもある。他人とは違う何かを抱えている人材こそが長期的には威力を出す。にもかかわらずこうした人生設計まで大学の講義でしなければならないというのが逆に情けない。内容的には多分いい本なのだろう。ただし、内容を鵜呑みにするのではなく、逆に反感を覚える気概がないと長い社会人生活には逆に耐えられないのではないか。「人並み」という言葉がもはやほめ言葉ではなく、「他人とどう差別化するか」あるいは「他人とどう差別化できるか」をアンチテーゼとして受け止めたい。
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