著者:立花隆 出版社:文藝春秋 発行年:2010年 本体価格:2400円
評価:☆☆☆☆☆
2010年もおしせまってきた中、「がん」をめぐるこうした優れた本を読むことができたのは幸せだ。NHKで放映された番組を収録したDVDも添付されており、前書きで著者も書いているがまずDVDを見てから本を読むとさらに理解が深まる。「がん」についてはまだ未知の部分がどれだけ多いか。また、「がん」が理論的にはいかにして発生するか。そしてそれはまた人類の進化の歴史と密接不可分であることなどが明らかにされていく。最終的には「生と死」をめぐる問題になっていくが、著者が「人間には死ぬ力がある」と語りだす場面は感動的だ。生きる力があれば死ぬ力もある。人類の多くがこの病気に倒れていくが、これまでの根性で立ち向かうという闘病の哲学とはまた違う別の死に方あるいは病気との向き合い方を呈示した本。
かなりいろいろな分野の書籍を読みますが、まずはビジネス関連書籍を中心に…なお個人的な☆印ですのであまり御参考にはなさらず…自分の好きな本を読んで好きなように活用していただく一助になればと思います。現在合計で2143冊の書籍についてアップロードしています_¢(0-0ヘ)。そろそろ「タグ」をまめにつけて整理していこうかな、と考えています。順不同ですがそのうちに分類基準を決めていきます【^_^】 「濫読」ではあるのですが、定期的に 1.民法・会社法 2.財務会計 3.近代経済学 4.流通・マーケティング 5.世界史関係 の書籍は読むようにしています。
2010年12月29日水曜日
野村の授業(日本文芸社)
著者:橋上秀樹 出版社:日本文芸社 発行年:2010年 本体価格:743円
ヤクルト時代の橋上秀樹といえば土橋選手と並んで、手堅いバッティングとどこでも守れる守備を誇るユーティリティ・プレイヤーという印象が強かった。代打で起用されることもあれば外野の守備固めで起用されることもあったが、ヤクルトファンからすると手堅くいきたい場面ではムラのある選手よりも橋上選手がでてきたほうが安心…といった印象である。この本を読むと橋上氏が現役時代から相手投手の癖を見抜き、種々の野球戦術を勉強していたことがわかる。才能だけに頼らず、勉強に裏打ちされたユーティリティだったわけだ。身体能力は年齢とともに衰えるのはやむをえないが、知識は年齢をへると「つながり」をもって結晶化していく。結晶化された知識をさらに若い世代に伝えるという意味では、橋上氏がヘッドコーチには最適だったのだろう。データ重視の野球ではあっても「データの落とし穴にははまらない」という二段構えの戦術にのぞんでいるのがまた強い。精神力の強さと現場の変化におうじた柔軟性も必要となる。フィールドの選手にはなかなかそこまで判断する時間もないから、それを手助けしていたのが野村監督と橋上ヘッドコーチということだろう。「身だしなみや挨拶でソンすることはない」という合理的な考え方がやみくもに押し付けるよりも、若い選手にはついていきやすいリーダーシップといえるだろう。実学的に非常にやくだつ本。下手なビジネス本よりもずっと各種の「現場」で使える内容ではないだろうか。
ヤクルト時代の橋上秀樹といえば土橋選手と並んで、手堅いバッティングとどこでも守れる守備を誇るユーティリティ・プレイヤーという印象が強かった。代打で起用されることもあれば外野の守備固めで起用されることもあったが、ヤクルトファンからすると手堅くいきたい場面ではムラのある選手よりも橋上選手がでてきたほうが安心…といった印象である。この本を読むと橋上氏が現役時代から相手投手の癖を見抜き、種々の野球戦術を勉強していたことがわかる。才能だけに頼らず、勉強に裏打ちされたユーティリティだったわけだ。身体能力は年齢とともに衰えるのはやむをえないが、知識は年齢をへると「つながり」をもって結晶化していく。結晶化された知識をさらに若い世代に伝えるという意味では、橋上氏がヘッドコーチには最適だったのだろう。データ重視の野球ではあっても「データの落とし穴にははまらない」という二段構えの戦術にのぞんでいるのがまた強い。精神力の強さと現場の変化におうじた柔軟性も必要となる。フィールドの選手にはなかなかそこまで判断する時間もないから、それを手助けしていたのが野村監督と橋上ヘッドコーチということだろう。「身だしなみや挨拶でソンすることはない」という合理的な考え方がやみくもに押し付けるよりも、若い選手にはついていきやすいリーダーシップといえるだろう。実学的に非常にやくだつ本。下手なビジネス本よりもずっと各種の「現場」で使える内容ではないだろうか。
バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる(光文社)
国の貸借対照表を作成したとき、負債が多くて資産が少なくなる。ではその貸借差額が借方に生ずるがその差額とは何か…と著者は「課税権」とする。民間企業では無形固定資産に相当する部分だが、貸借対照表は著者がいうように国の一定時点のストックを表す表であると同時に将来のキャッシュフローを読み解く表でもある。負債が多くて資産が少ないが貸借バランスがとれるとなれば、負債の穴埋めをする課税権という無形固定資産があるということになる。著者は財政投融資に関係する部署にいたということで、財政投融資のALMを手がけていたという。年金や郵便貯金で集めたオカネを特殊法人に貸し付けていくという構図のなかで、いくら預かって、どれだけ運用すれば安全圏内か…と読み解くには確かにALMの考え方が一番リスク管理には適していただろう。この本ではこのほかに特別会計の問題、金融政策、プライマリーバランスとマクロ経済学の主なトピックスが扱われており、標準的なテキストと並行して読み進めると考え方の幅が広がると思う。固定相場制・金融政策・資本移動の同時成立はありえない…というやや面倒な考え方もわかりやすく説明されている。ただ理論から導き出される命題についてはこの本以外の論拠もあるので、安易に著者に同意するべきではない。いかにも確かに…とは思いたくなるが、それ以外の考え方はないか、それ以外の論拠はないか。なぜそれでは政策当局は金融緩和をさらに推進しないのか…と疑問を持つことが大事。日銀総裁も副総裁もいわば経済学のプロ。天下りなどの利権などよりも優先すべき課題については重々自覚されているはずで、それにも理由がある。理論どおりにならない現実を考えていくには面白い一冊ではないかと思う。
2010年12月28日火曜日
物語の命題(アスキー)
著者:大塚英志 出版社:アスキー・メディアワークス 発行年:2010年 本体価格:762円
ジェームズ・キャンベルの「神話の法則」などを読んでからこの本を読むとまた面白さが際立つ。キャンベルにも言及されているが、著者は「命題」(構造とかテーマでも代替可能か)を6つ取り出して、それにキャラクターやストーリーを肉付けして「作品」を作り出すスキルを教えてくれる。「命題」や「テーマ」がなにか高尚なもののように考えられている時代であれば「とんでもない」ということになるが、いまやポストモダンの時代であるがゆえさして抵抗もなく読み進める読者が多いのではなかろうか。で、この命題をもとにして学生が作り出した絵コンテがまた実際に面白いのだ。同じ物語を変奏している…という「命題」自体、これまでも批評の世界では「変奏」されつつあったのだが、「命題」としての役割をマンガの世界で果たしてきたのは、日本では手塚治虫。映画の世界全般では1930年代のハリウッド映画ということになるだろうか。
で、自分なりにあれこれ「変奏」された作品を思い出すと、「エーリクの命題」(物語の外部の世界から内部の世界に入り込んでくる主人公)でいうと、ゲームから映画にもなった「ひぐらしの鳴くころに」かな。都会からとある閉鎖的な田舎町にやってきた転校生が内部の秩序をあれこれ刺激するという意味では「エーリクの法則」にぴったりだろう。自分の出生を求めて旅立つという「百鬼丸の命題」だと「マトリックス」が該当するだろうし、「みつばちハッチ」もその系列。男女の進行する時間のスピードが違う場合の悲劇といえばハリウッド映画「ジャケット」、大林宣彦監督の「さびしんぼう」「転校生」。性の自己決定を扱った「フロルの命題」ならばマンガ「オルフェウスの神話」。成長と離別を扱った「アリエッティの命題」ならばマンガ「犬神」。応用が聞くうえに、「それで構図が同じであってもいい作品とそうでない作品」になぜ分類できるのだろう…とさらにあれこれ考える力ができる。構造を見抜いてから、さらにその先へと考え方が進化していくこと。これってまさしく「進歩主義的科学」にふさわしいのではなかろうか。あ、これも「唯物史観」という命題を変奏しているわけだけど。
ジェームズ・キャンベルの「神話の法則」などを読んでからこの本を読むとまた面白さが際立つ。キャンベルにも言及されているが、著者は「命題」(構造とかテーマでも代替可能か)を6つ取り出して、それにキャラクターやストーリーを肉付けして「作品」を作り出すスキルを教えてくれる。「命題」や「テーマ」がなにか高尚なもののように考えられている時代であれば「とんでもない」ということになるが、いまやポストモダンの時代であるがゆえさして抵抗もなく読み進める読者が多いのではなかろうか。で、この命題をもとにして学生が作り出した絵コンテがまた実際に面白いのだ。同じ物語を変奏している…という「命題」自体、これまでも批評の世界では「変奏」されつつあったのだが、「命題」としての役割をマンガの世界で果たしてきたのは、日本では手塚治虫。映画の世界全般では1930年代のハリウッド映画ということになるだろうか。
で、自分なりにあれこれ「変奏」された作品を思い出すと、「エーリクの命題」(物語の外部の世界から内部の世界に入り込んでくる主人公)でいうと、ゲームから映画にもなった「ひぐらしの鳴くころに」かな。都会からとある閉鎖的な田舎町にやってきた転校生が内部の秩序をあれこれ刺激するという意味では「エーリクの法則」にぴったりだろう。自分の出生を求めて旅立つという「百鬼丸の命題」だと「マトリックス」が該当するだろうし、「みつばちハッチ」もその系列。男女の進行する時間のスピードが違う場合の悲劇といえばハリウッド映画「ジャケット」、大林宣彦監督の「さびしんぼう」「転校生」。性の自己決定を扱った「フロルの命題」ならばマンガ「オルフェウスの神話」。成長と離別を扱った「アリエッティの命題」ならばマンガ「犬神」。応用が聞くうえに、「それで構図が同じであってもいい作品とそうでない作品」になぜ分類できるのだろう…とさらにあれこれ考える力ができる。構造を見抜いてから、さらにその先へと考え方が進化していくこと。これってまさしく「進歩主義的科学」にふさわしいのではなかろうか。あ、これも「唯物史観」という命題を変奏しているわけだけど。
2010年12月27日月曜日
チェーザレ(第1巻~第5巻)(講談社)
著者:惣領冬美 出版社:講談社 発行年:2006年~2008年 本体価格:743円
ルネサンス期、さらにはメディチ家がおそらくこの直後にいったん破滅し、さらにはドメニコ会の教条的な支配がフィレンツェを襲うであろう時期。サピエンツァ大学に入学したアンジェロを主人公に、チェーザレ・ボルジアを描写。フランス王家、スペイン王家、フィレンツェのそれぞれの思惑が大学内でも交錯する。マンガのコマの背景にまで時代考証にこだわり、巻末にはマンガらしからぬ注釈の山。注釈がなくてもマンガは十分面白いが、「時計のルネサンス」など小道具にいたるまで著者が考慮しながら作画していることがわかり興味深い。ま、イケメンぞろいなのはマンガだけに仕方がない部分はあるが、チェーザレ・ボルジアのさらなる第6巻の進展が楽しみだ。第5巻まではチェーザレの「なぜ司教をめざすのか」の「背後関係」が緻密に描写されている。
ルネサンス期、さらにはメディチ家がおそらくこの直後にいったん破滅し、さらにはドメニコ会の教条的な支配がフィレンツェを襲うであろう時期。サピエンツァ大学に入学したアンジェロを主人公に、チェーザレ・ボルジアを描写。フランス王家、スペイン王家、フィレンツェのそれぞれの思惑が大学内でも交錯する。マンガのコマの背景にまで時代考証にこだわり、巻末にはマンガらしからぬ注釈の山。注釈がなくてもマンガは十分面白いが、「時計のルネサンス」など小道具にいたるまで著者が考慮しながら作画していることがわかり興味深い。ま、イケメンぞろいなのはマンガだけに仕方がない部分はあるが、チェーザレ・ボルジアのさらなる第6巻の進展が楽しみだ。第5巻まではチェーザレの「なぜ司教をめざすのか」の「背後関係」が緻密に描写されている。
鉄の骨(講談社)
著者:池井戸潤 出版社:講談社 発行年:2009年 本体価格:1800円 評価:☆☆☆☆☆
「談合」というともちろん犯罪ではある。が高度経済成長期にはどこの建設会社もおそらく公共事業の入札時には手をそめていたはずのものだ。談合が犯罪なのは、弱小建設会社の新規参入を妨げるほか、市場原理にゆだねればおそらく相当安値で発注できたはずの建設工事が割高となり納税者の負担となる…といったところか。新入社員の「平太」はある理由から談合の情報を収集して入札する「業務課」に配属される。区役所の小さな工事の入札に新規の事業者が考えられない安値で落札。同業他社も参入して大規模工事の次の入札の準備を始めるが…。といったあらすじで20代の恋愛模様などもからめて一気に読ませる展開。「談合」は「必要悪」という論理にも一定の理解を示しつつも、最終的には犯罪に手を染めるか染めないかといった二者択一に追い込まれていく。「談合」の「雰囲気」を理解するにはかなりいい教材だろう。一方で「談合」摘発の捜査を進める東京地検特捜部の地道な捜査ぶりも描写されており、リアリティが増す。
「談合」というともちろん犯罪ではある。が高度経済成長期にはどこの建設会社もおそらく公共事業の入札時には手をそめていたはずのものだ。談合が犯罪なのは、弱小建設会社の新規参入を妨げるほか、市場原理にゆだねればおそらく相当安値で発注できたはずの建設工事が割高となり納税者の負担となる…といったところか。新入社員の「平太」はある理由から談合の情報を収集して入札する「業務課」に配属される。区役所の小さな工事の入札に新規の事業者が考えられない安値で落札。同業他社も参入して大規模工事の次の入札の準備を始めるが…。といったあらすじで20代の恋愛模様などもからめて一気に読ませる展開。「談合」は「必要悪」という論理にも一定の理解を示しつつも、最終的には犯罪に手を染めるか染めないかといった二者択一に追い込まれていく。「談合」の「雰囲気」を理解するにはかなりいい教材だろう。一方で「談合」摘発の捜査を進める東京地検特捜部の地道な捜査ぶりも描写されており、リアリティが増す。
2010年12月26日日曜日
考える力をつくるノート(講談社)
著者:茂木健一郎、細谷功、内田和成、藤巻幸夫、小山龍介、香山リカほか 出版社:講談社 発行年:2010年 本体価格:1600円 評価:☆☆☆☆☆
ビジネス書ブームといわれているが、正直、同じような内容でしかもタイトルが長い書籍のオンパレードに食傷気味になってきた。方法論としていくつも自分の頭のなかに入れておくのは有用ではあるが、メモやノートの取り方だけでも今は100種類以上の本は出ているだろうし、勉強法の本も100は超えている。おそらく実際にメモとるときには手近のメモに忘れずに記録しておき、勉強も最終的には自分のノートに手書きでしっかりかく…ということに尽きるのだと思う。で、この本は慶應義塾大学の丸の内シティキャンパスでの講演会をまとめた本。一線の学者・医者・著者の考え方が凝縮されており、けっこう便利。この本の内容だけでビジネス書の大半はカバーできるのではないかと思う。一般人にとっても考えることはもちろん大事だが、ハウツーばかりがいやに多いのに嫌気がさしてきているヒトには特にオススメではないかと思う。
ビジネス書ブームといわれているが、正直、同じような内容でしかもタイトルが長い書籍のオンパレードに食傷気味になってきた。方法論としていくつも自分の頭のなかに入れておくのは有用ではあるが、メモやノートの取り方だけでも今は100種類以上の本は出ているだろうし、勉強法の本も100は超えている。おそらく実際にメモとるときには手近のメモに忘れずに記録しておき、勉強も最終的には自分のノートに手書きでしっかりかく…ということに尽きるのだと思う。で、この本は慶應義塾大学の丸の内シティキャンパスでの講演会をまとめた本。一線の学者・医者・著者の考え方が凝縮されており、けっこう便利。この本の内容だけでビジネス書の大半はカバーできるのではないかと思う。一般人にとっても考えることはもちろん大事だが、ハウツーばかりがいやに多いのに嫌気がさしてきているヒトには特にオススメではないかと思う。
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