著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2004年(文庫版) 本体価格:438円
紀元前60年から紀元前49年(カエサル40歳~50歳)の10年を描写する。この本ではガリア地方を縦横無尽にかけめぐるカエサルの姿が地図とともに示される。そのさなか三頭政治を一端を担うクラッススがパルティア王国のスレナスと戦い、全滅。またガリア民族もヴェルチンジェトリックスという優秀なリーダーが統率した反乱が起きる。そしてガリア戦記の事実上のラストをかざるアレシア攻防戦が描かれる。カエサルが配備した独特の防御柵が文庫本126・127ページに示されているが、機械装置や技術、土木工事といったインフラを重視した紀元前のリーダーの先見性が示されている。いっぽう元老院重視の議員たちはポンペイウスの取り込みに成功し、アレシア攻防戦で事実上ガリアを制定したカエサルは護民官にアントニウスを送り込む…。ラストはカエサルとこれまで戦いをともにしてきた副官ラビエヌスに著者は光をあてる。「ガリア戦記」ではあまり触れられていない副将だが、カエサルの背後を常に守り続けてきたベテランの軍人だったが、ポンペイウスにつくのかカエサルにつくのか、その最終決定をこの第10巻で示す。
かなりいろいろな分野の書籍を読みますが、まずはビジネス関連書籍を中心に…なお個人的な☆印ですのであまり御参考にはなさらず…自分の好きな本を読んで好きなように活用していただく一助になればと思います。現在合計で2143冊の書籍についてアップロードしています_¢(0-0ヘ)。そろそろ「タグ」をまめにつけて整理していこうかな、と考えています。順不同ですがそのうちに分類基準を決めていきます【^_^】 「濫読」ではあるのですが、定期的に 1.民法・会社法 2.財務会計 3.近代経済学 4.流通・マーケティング 5.世界史関係 の書籍は読むようにしています。
2010年11月27日土曜日
2010年11月25日木曜日
ユリウス・カエサル ルビコン以前 中巻(第9巻)(新潮社)
著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2004年(文庫版) 本体価格:476円
紀元前60年から紀元前49年までのカエサル40歳から50歳までの十年を描く。上巻では「遅咲きの花」といった感のカエサルだが、この紀元前60年ごろから、エリートだったポンペイウスを猛速度で追いかけ始める。パトロンだったクラッススとともに三頭政治体制を組み、キケロや小カトーといった元老院派と対立しつつローマの国防と元老院打破のために走り回る。ローマの公職員がいかにふるまわなければならないかを定めた法律などは600年後の「ローマ法大全」(ユスティニアス帝)にも収められた。またガリア戦記を著し、ドーバー海峡を横断してブリタニアにもわたる。ライン河を越えてゲルマン民族やゲルマン民族と組むガリア人たちと始終戦争を続け、紀元前49年は終わる。カエサルがただの借金漬けで色男ではなかった…というのは現代だからこそわかるわけだが、ただ単に戦争に強いというだけでは、ローマより遠方の地にあって軍団を率いることはかなわなかったはず。ガリアの地図が頭に入っていたに違いないと著者が断定するくだりがあるが、このリーダシップと先見の明はひょっとして若いころの「読書」にあったのではないか…とも思う。ミステリー小説よりも面白いカエサルの一生。まだこの中巻にして50歳である。
紀元前60年から紀元前49年までのカエサル40歳から50歳までの十年を描く。上巻では「遅咲きの花」といった感のカエサルだが、この紀元前60年ごろから、エリートだったポンペイウスを猛速度で追いかけ始める。パトロンだったクラッススとともに三頭政治体制を組み、キケロや小カトーといった元老院派と対立しつつローマの国防と元老院打破のために走り回る。ローマの公職員がいかにふるまわなければならないかを定めた法律などは600年後の「ローマ法大全」(ユスティニアス帝)にも収められた。またガリア戦記を著し、ドーバー海峡を横断してブリタニアにもわたる。ライン河を越えてゲルマン民族やゲルマン民族と組むガリア人たちと始終戦争を続け、紀元前49年は終わる。カエサルがただの借金漬けで色男ではなかった…というのは現代だからこそわかるわけだが、ただ単に戦争に強いというだけでは、ローマより遠方の地にあって軍団を率いることはかなわなかったはず。ガリアの地図が頭に入っていたに違いないと著者が断定するくだりがあるが、このリーダシップと先見の明はひょっとして若いころの「読書」にあったのではないか…とも思う。ミステリー小説よりも面白いカエサルの一生。まだこの中巻にして50歳である。
2010年11月24日水曜日
ユリウス・カエサル 上巻(第8巻)(新潮社)
著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年(文庫版) 本体価格:400円(文庫版)
話の流れは再びスッラの元老院重視の政治とマリウスの民衆重視の対立の時代にいったん戻る。カエサルの誕生から歴史を語るには、どうしてもローマ全体の歴史を一度逆戻りする必要があるからだ。スッラが独裁官に就任したときにはカエサル自身が処刑名簿に名前が記載されていたということもあるが、民衆派のマリウスも叔父にあたるためである。また著者自身がカエサルの全体像をイメージするには、生まれたときから全体をとおしてみていく必要性があることを書籍のなかで著述している。借金だらけで、しかも女たらしだったが、借金で公共事業をおこなうとともに、女性遍歴は多いものの恨まれることはなかったというカエサル。37歳にしてようやく英雄の片鱗をみせはじめるのだが、アレキサンダー大王や当時の英雄ポンペイウスなどと比較してもかなり遅咲きの英雄だ。しかも「英雄」にしては、お金や女性問題など世間的にいう「英雄」のイメージとはややかけはなれているカエサル。この人物はロードス島への留学をはじめ当時の最高水準の教育を受けていたのは間違いないが、だとしてもその後、ローマ帝国を一気にぎゅうじるほどの才能はまだこの上巻では著述されていない。指導力もカリスマ性もおそらくその後花開いたのではないかと想像するが、「いかに俗物だったか」「俗物ではあったが英雄でもあった」という二律背反の業績を歴史に残す。後にライバルとなる小カトーやキケロのデビューもこの上巻で詳細に知ることができるほか、トーガの着方や、ローマ市内の一戸建ての住居内地図なども掲載されている。
話の流れは再びスッラの元老院重視の政治とマリウスの民衆重視の対立の時代にいったん戻る。カエサルの誕生から歴史を語るには、どうしてもローマ全体の歴史を一度逆戻りする必要があるからだ。スッラが独裁官に就任したときにはカエサル自身が処刑名簿に名前が記載されていたということもあるが、民衆派のマリウスも叔父にあたるためである。また著者自身がカエサルの全体像をイメージするには、生まれたときから全体をとおしてみていく必要性があることを書籍のなかで著述している。借金だらけで、しかも女たらしだったが、借金で公共事業をおこなうとともに、女性遍歴は多いものの恨まれることはなかったというカエサル。37歳にしてようやく英雄の片鱗をみせはじめるのだが、アレキサンダー大王や当時の英雄ポンペイウスなどと比較してもかなり遅咲きの英雄だ。しかも「英雄」にしては、お金や女性問題など世間的にいう「英雄」のイメージとはややかけはなれているカエサル。この人物はロードス島への留学をはじめ当時の最高水準の教育を受けていたのは間違いないが、だとしてもその後、ローマ帝国を一気にぎゅうじるほどの才能はまだこの上巻では著述されていない。指導力もカリスマ性もおそらくその後花開いたのではないかと想像するが、「いかに俗物だったか」「俗物ではあったが英雄でもあった」という二律背反の業績を歴史に残す。後にライバルとなる小カトーやキケロのデビューもこの上巻で詳細に知ることができるほか、トーガの着方や、ローマ市内の一戸建ての住居内地図なども掲載されている。
クラッシュ(角川書店)
著者:楡周平 出版社:角川書店 発行年:2009年(角川書店文庫版)本体価格:895円(角川書店文庫版)
フランクフルト空港で新型航空機が着地を誤って事故。飛行プログラムを組んだソフトウェア会社はプログラムのバグを取り除いて新たなバージョンを開発。しかし人間関係のもつれから、バージョンアップされたはずのプログラムには「エボラ」と命名されたウイルスが混入していた…。時代がドッグイヤーとよばれる変化のなかで、世界をシステムダウンさせるほどの威力があるウイルスがフロッピーディスク1枚におさめられ、飛行機のプログラムにもインストールされるといった展開はまあご愛嬌。もはやウイルスセキュリティも新型ウイルスに負けないほど進化したし、1998年当時であっても、なんのチェックもしないでソフトウェアをインストールするようなことはなかったと思う。にもかかわらずこの小説はなかなか読ませる。飛行機パニックストーリーは「出口がない」「登場人物が限定されている」といった密室ミステリーにも似た部分があるうえ、燃料によるタイムリミットもある。どんなに長いミステリーであってもなんらかの解決策を作家は提示しなくてはならない。もちろんこの本も最後はちゃんとしたオチにたどりつくわけだが、今でもなおこのストーリーはデバイスとネット環境をアップデートすると成立する核がある。「未来を予測した…」というような賛辞よりも、デバイスやソフトウェアのバージョンにかかわりなく、「クラッシュ」はいつでもいかなる状況でも想定外の条件で発生しうる…というのが「核」か。
フランクフルト空港で新型航空機が着地を誤って事故。飛行プログラムを組んだソフトウェア会社はプログラムのバグを取り除いて新たなバージョンを開発。しかし人間関係のもつれから、バージョンアップされたはずのプログラムには「エボラ」と命名されたウイルスが混入していた…。時代がドッグイヤーとよばれる変化のなかで、世界をシステムダウンさせるほどの威力があるウイルスがフロッピーディスク1枚におさめられ、飛行機のプログラムにもインストールされるといった展開はまあご愛嬌。もはやウイルスセキュリティも新型ウイルスに負けないほど進化したし、1998年当時であっても、なんのチェックもしないでソフトウェアをインストールするようなことはなかったと思う。にもかかわらずこの小説はなかなか読ませる。飛行機パニックストーリーは「出口がない」「登場人物が限定されている」といった密室ミステリーにも似た部分があるうえ、燃料によるタイムリミットもある。どんなに長いミステリーであってもなんらかの解決策を作家は提示しなくてはならない。もちろんこの本も最後はちゃんとしたオチにたどりつくわけだが、今でもなおこのストーリーはデバイスとネット環境をアップデートすると成立する核がある。「未来を予測した…」というような賛辞よりも、デバイスやソフトウェアのバージョンにかかわりなく、「クラッシュ」はいつでもいかなる状況でも想定外の条件で発生しうる…というのが「核」か。
2010年11月23日火曜日
勝者の混迷 下巻(第7巻)(新潮社)
著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年(文庫版) 本体価格:400円(文庫版)
上巻につづき前1世紀のローマ帝国。同盟者戦役に続いて、ミトリダテス戦役、さらに映画化もされた「スパルタカスの反乱」も国内で発生する。元老院の権威と権力を守りたいスッラは次々と体制改革をおこない、平民の権利を守る護民官も巧みな制度改正で優秀な人材が選挙に出ないような仕組みを考え出す。そしてスッラが独裁官から自ら引退したその後、ポンペイウスが影響力を生み出していく。ローマはそして、シリアにも踏み込み、戦闘なくしてセレウコス王朝が滅ぶ。かくして巻末に掲載された地図は上巻からさらに上書きされ、スペイン、ミラノ、イリリア地方、マケドニア、アカイア同盟、ロードス島、ビティニア地方、キリキア地方、シリア地方を属州におさめ、ポントス、アルメニア、カッパドキア、エジプトマウリタニア王国を同盟国へ、そしてヌミディア王国とは引き続き密接な同盟国関係を維持。かくして下巻でシーザーはちらっと顔をだし、地図の白い部分(ガリア地方とトラキア地方)を除く地中海沿岸をすべて支配下・影響下においた「勝者」が混迷の後、さらに拡大していく予感を示して終わる。イタリア半島・ギリシア半島・小アジアの3つはそれぞれ地中海にタテにはみだした形をしているが、陸路だけでなく地中海を中心にしてみると、海2つを越えればローマから小アジアへすぐだと気づく。また地中海貿易を円滑にすすめるためには当時空白地区だったキリキア地方の海賊も平定しなければならないこともすぐわかる。地図が利用にたえうる技術になったのはルネサンスのころと記憶しているが、当時のローマ帝国も不完全ながらも地中海を中心にした独自の地図で、要所要所を落としていくという「知恵の継承」がおそらくなされていたのであろう。
上巻につづき前1世紀のローマ帝国。同盟者戦役に続いて、ミトリダテス戦役、さらに映画化もされた「スパルタカスの反乱」も国内で発生する。元老院の権威と権力を守りたいスッラは次々と体制改革をおこない、平民の権利を守る護民官も巧みな制度改正で優秀な人材が選挙に出ないような仕組みを考え出す。そしてスッラが独裁官から自ら引退したその後、ポンペイウスが影響力を生み出していく。ローマはそして、シリアにも踏み込み、戦闘なくしてセレウコス王朝が滅ぶ。かくして巻末に掲載された地図は上巻からさらに上書きされ、スペイン、ミラノ、イリリア地方、マケドニア、アカイア同盟、ロードス島、ビティニア地方、キリキア地方、シリア地方を属州におさめ、ポントス、アルメニア、カッパドキア、エジプトマウリタニア王国を同盟国へ、そしてヌミディア王国とは引き続き密接な同盟国関係を維持。かくして下巻でシーザーはちらっと顔をだし、地図の白い部分(ガリア地方とトラキア地方)を除く地中海沿岸をすべて支配下・影響下においた「勝者」が混迷の後、さらに拡大していく予感を示して終わる。イタリア半島・ギリシア半島・小アジアの3つはそれぞれ地中海にタテにはみだした形をしているが、陸路だけでなく地中海を中心にしてみると、海2つを越えればローマから小アジアへすぐだと気づく。また地中海貿易を円滑にすすめるためには当時空白地区だったキリキア地方の海賊も平定しなければならないこともすぐわかる。地図が利用にたえうる技術になったのはルネサンスのころと記憶しているが、当時のローマ帝国も不完全ながらも地中海を中心にした独自の地図で、要所要所を落としていくという「知恵の継承」がおそらくなされていたのであろう。
朝倉恭介(角川書店)
著者:楡周平 出版社:角川書店 発行年:2009年(角川書店文庫版) 本体価格:781円(角川書店文庫版)
シリーズ最終作。会社の帰りに喫茶店で「ターゲット」を読み終わり、そのまま駅の近くの本でこの本を購入。もともとシリーズものに弱いというのは自覚していたが、1作目の「Cの福音」が面白くてその続編もなかなかとなるとやっぱり最後まで読み通してしまう。南米で量産されているコカインは中継基地(つまりアメリカ)が必要ということもあって末端価格がはねあがるという特性があった。その流通コストを関税法の盲点をついて削減したのが朝倉恭介。だがその秘密はCIA、警察そしてジャーナリストにも知られるようになってきた…。「善」と「悪」というよりも孤独な魂が最後にぶつかりあうシーンが印象的だ。場所はコロンビア、アメリカと移るが最後はやはり日本の神奈川県警をまきこんだ壮絶なカーチェイスシーン。逃げ切れるわけがないと思う読者は、朝倉恭介のリアルな「逃走」に逆にしびれるにちがいない。
シリーズ最終作。会社の帰りに喫茶店で「ターゲット」を読み終わり、そのまま駅の近くの本でこの本を購入。もともとシリーズものに弱いというのは自覚していたが、1作目の「Cの福音」が面白くてその続編もなかなかとなるとやっぱり最後まで読み通してしまう。南米で量産されているコカインは中継基地(つまりアメリカ)が必要ということもあって末端価格がはねあがるという特性があった。その流通コストを関税法の盲点をついて削減したのが朝倉恭介。だがその秘密はCIA、警察そしてジャーナリストにも知られるようになってきた…。「善」と「悪」というよりも孤独な魂が最後にぶつかりあうシーンが印象的だ。場所はコロンビア、アメリカと移るが最後はやはり日本の神奈川県警をまきこんだ壮絶なカーチェイスシーン。逃げ切れるわけがないと思う読者は、朝倉恭介のリアルな「逃走」に逆にしびれるにちがいない。
ターゲット(宝島社)
著者:楡周平 出版社:宝島社 発行年:2001年(宝島社文庫版) 本体価格:762円(宝島社文庫版)
シリーズ5作目。再び朝倉恭介が主役となり、北朝鮮の生物テロ攻撃を防ぐ役割をする。中国、北朝鮮、日本、米国の力関係を概括したあと、北朝鮮の南進作戦の前提として在日米軍基地の破壊をもくろむ北朝鮮工作部。それを阻止しようとするCIAとCIAの臨時工作員にやむなくなった朝倉恭介。ちょっとありえない設定のようでいて、日本を攻撃する武器はなにもミサイルだけでなく生物化学兵器の可能性もあり、それを持ち込むのであれば他の国を経由して…という設定はきわめてリアル。この小説が映画化されるのであれば主役はキアヌ・リーブスあたりにやってほしいものだが…。小説なのにスローモーションで銃撃戦を見ているような感覚におそわれるスパイミステリー。
シリーズ5作目。再び朝倉恭介が主役となり、北朝鮮の生物テロ攻撃を防ぐ役割をする。中国、北朝鮮、日本、米国の力関係を概括したあと、北朝鮮の南進作戦の前提として在日米軍基地の破壊をもくろむ北朝鮮工作部。それを阻止しようとするCIAとCIAの臨時工作員にやむなくなった朝倉恭介。ちょっとありえない設定のようでいて、日本を攻撃する武器はなにもミサイルだけでなく生物化学兵器の可能性もあり、それを持ち込むのであれば他の国を経由して…という設定はきわめてリアル。この小説が映画化されるのであれば主役はキアヌ・リーブスあたりにやってほしいものだが…。小説なのにスローモーションで銃撃戦を見ているような感覚におそわれるスパイミステリー。
登録:
投稿 (Atom)






