著者:楡周平 出版社:宝島社 発行年:1996年 本体価格:1456年(文庫本は宝島社と角川書店からそれぞれ発刊)
総合商社の社員の息子としてアメリカのミリタリースクールに通学後、ブラウン大学に進学。オールAの成績で前途洋洋だった朝倉恭介に両親の突然の死。朝倉はとある事件をきっかけに外資系名門企業や日本企業への就職ではなく、知人のマフィアを訪ねる。そしてそこでプレゼンした内容は、これまでだれも考えなかった日本の税関システムを利用したコカインの密輸方法だった…。「ラストワンマイル」も「再生巨流」もそうだったが、物流に関する知識が非常に緻密に描写されており、いわば物流ミステリーといった様相を呈している。おそらく著者は外資系の物流関係の会社にいたのではないかと推定されるが…。CYカーゴやCFYカーゴなどコンテナの種類などもさらっと物語に挿入されていて、物流に興味のある人には特にオススメのミステリー。六本木の台湾マフィアの様子などはやはり馳星周のほうがすさまじいバイオレンスだが、バイオレンス描写はあまり得意ではない印象も。むしろ淡々と「モノ」がアメリカから日本へ動いていく描写が怖い。薬物に関する描写もリアリティがあり、著者の相当な取材量がうかがわれる。「ちょっとしたきっかけで」コカインを始めた総合商社の若手社員がどんどん崩壊していく様子がこの本でいう「Cの福音」…。
かなりいろいろな分野の書籍を読みますが、まずはビジネス関連書籍を中心に…なお個人的な☆印ですのであまり御参考にはなさらず…自分の好きな本を読んで好きなように活用していただく一助になればと思います。現在合計で2143冊の書籍についてアップロードしています_¢(0-0ヘ)。そろそろ「タグ」をまめにつけて整理していこうかな、と考えています。順不同ですがそのうちに分類基準を決めていきます【^_^】 「濫読」ではあるのですが、定期的に 1.民法・会社法 2.財務会計 3.近代経済学 4.流通・マーケティング 5.世界史関係 の書籍は読むようにしています。
2010年11月15日月曜日
ハンニバル戦記 上巻(3巻)(新潮社)
著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年(文庫版) 本体価格:362円(文庫版)
3巻目まで読み進める。やはり単行本よりも読みやすい。ただし地図など図版は面積が小さくなるのでそれは単行本のほうがやはり有利ではあるが。この上巻では主に第一次ポエニ戦争を取り扱う。コルシカ、サルディーニャ、シチリアなどイタリア半島の目と鼻の先の島もカルタゴの支配下にあり、地中海の制海権のほとんどはカルタゴが握っている状態。またローマは背後のイリリア地方やマケドニアにも脅威を抱えている。ハンニバルはまだほんの少ししか登場せず、その父親のハミルカルがカルタゴを率いる。ハミルカルは国外重視派だったため第一次戦役後は現在のスペインに移り、そこでカルタゴの領土を増加する。そして第二次戦役の布石を作る。第一次ポエニ戦争ではカルタゴもローマもシチリアの支配権をめぐる局地戦といってもいい段階で、しかもポエニ戦争の再開をだれもが予想しておらず、ローマはむしろ北部のガリア人(ケルト人)に備えた軍事強化が目標とされていた。そしてまたローマではギリシア文化がはなひらき、同盟国に近くなったシラクサなどへの留学も盛んになっていく。
3巻目まで読み進める。やはり単行本よりも読みやすい。ただし地図など図版は面積が小さくなるのでそれは単行本のほうがやはり有利ではあるが。この上巻では主に第一次ポエニ戦争を取り扱う。コルシカ、サルディーニャ、シチリアなどイタリア半島の目と鼻の先の島もカルタゴの支配下にあり、地中海の制海権のほとんどはカルタゴが握っている状態。またローマは背後のイリリア地方やマケドニアにも脅威を抱えている。ハンニバルはまだほんの少ししか登場せず、その父親のハミルカルがカルタゴを率いる。ハミルカルは国外重視派だったため第一次戦役後は現在のスペインに移り、そこでカルタゴの領土を増加する。そして第二次戦役の布石を作る。第一次ポエニ戦争ではカルタゴもローマもシチリアの支配権をめぐる局地戦といってもいい段階で、しかもポエニ戦争の再開をだれもが予想しておらず、ローマはむしろ北部のガリア人(ケルト人)に備えた軍事強化が目標とされていた。そしてまたローマではギリシア文化がはなひらき、同盟国に近くなったシラクサなどへの留学も盛んになっていく。
2010年11月14日日曜日
ローマは一日にしてならず上巻・下巻(1・2巻)(新潮社)
著者:塩野七生 出版社:新潮社 発行年:2002年 本体価格:第1巻400円、第2巻438円
単行本のシリーズは途中まで読んでいたのだが、いかんせん場所をとるうえに重い。通勤電車で読むにはやはり文庫本が適している。ということで文庫版がでたのをきっかけに第1巻と第2巻を文庫本で読書。ローマ、都市国家の範囲をこえて帝国となりえたのはなぜか、ローマの基礎は最初の700年ほどに形成されるといった意味合いでいえばこの第1巻と第2巻は続く40巻までの歴史の「基礎」となる。トロイア戦争で逃げ延びた子孫がロムルスとしてローマ人となった説は「御伽噺」として塩野は面白く扱い、実際にはラテン諸民族の「はぐれもの」が最初ローマに集落を作ったのではないか、そしてそれは北のアルトリア人にとっては守りにくく、南のギリシア諸民族が形成した都市からすると海から離れすぎていたのではなかったかという仮説を提する。学者だとなかなか活字で思い切ったことを書くにはそれなりの証拠が必要とされるのだろうが、塩野の場合には小説という形でさまざまな仮説を大胆に著述する。そしてそれがおそらく学問の進歩を促すのだろうと思う。だれかが思い切った仮説をだし、実証証拠はあとからついてくるというのはまさしく「トロイア戦争」のシェリーマンそのものの生き様だ。ギリシアの文化がローマに流入してくる時代にはまだ早い。前3世紀まで、ポエニ戦争開始直前までの500年間をこの2冊できっちり学び、そして第3巻から地中海西部を支配下におくフェニキア人カタルゴとの戦いが始まる。
単行本のシリーズは途中まで読んでいたのだが、いかんせん場所をとるうえに重い。通勤電車で読むにはやはり文庫本が適している。ということで文庫版がでたのをきっかけに第1巻と第2巻を文庫本で読書。ローマ、都市国家の範囲をこえて帝国となりえたのはなぜか、ローマの基礎は最初の700年ほどに形成されるといった意味合いでいえばこの第1巻と第2巻は続く40巻までの歴史の「基礎」となる。トロイア戦争で逃げ延びた子孫がロムルスとしてローマ人となった説は「御伽噺」として塩野は面白く扱い、実際にはラテン諸民族の「はぐれもの」が最初ローマに集落を作ったのではないか、そしてそれは北のアルトリア人にとっては守りにくく、南のギリシア諸民族が形成した都市からすると海から離れすぎていたのではなかったかという仮説を提する。学者だとなかなか活字で思い切ったことを書くにはそれなりの証拠が必要とされるのだろうが、塩野の場合には小説という形でさまざまな仮説を大胆に著述する。そしてそれがおそらく学問の進歩を促すのだろうと思う。だれかが思い切った仮説をだし、実証証拠はあとからついてくるというのはまさしく「トロイア戦争」のシェリーマンそのものの生き様だ。ギリシアの文化がローマに流入してくる時代にはまだ早い。前3世紀まで、ポエニ戦争開始直前までの500年間をこの2冊できっちり学び、そして第3巻から地中海西部を支配下におくフェニキア人カタルゴとの戦いが始まる。
2010年11月11日木曜日
荻原式貯金術(イースト・プレス)
著者:荻原博子 出版社:イーストプレス 発行年:2010年 本体価格:952円
新書サイズにしてはやや価格は割高だが、ファイナンシャル・プランナーとしては個人的にはナンバー1ではないかと思っている萩原博子氏の著作。収入に対する貯金割合の目安は10パーセントとか住宅の頭金は20パーセント以上とか定番のセオリーに加えて、税額所得控除のコツなどだれにでも実行可能なスキルが網羅されている。医療費の10万円以上の請求書をきっちりファイルしておくと後日便利とか、大きなマクロ経済の理論を分析することももちろん大事だが家計単位でミクロな可処分所得のやりとりも当然大事。NHK受信料などは利息分も含めて前払いのほうが安いというのも頭に入れておいていいスキルではないかと思う。そしてこの本のやり方を追求していくとお、結局は「整理整頓をしっかりしておく」ということに突き当たる。必要な請求書はしっかりファイル、衣料品についても、もう着ないと思ったら捨てる前に雑巾がけなどに再利用してから捨てるとか、ヤフーオークションを利用してみるとか、いろいろな生活の知恵がこめられている。このデフレ不況のもとで、こういう豆知識、けっこう積もれば大きな意味につながっていく。
新書サイズにしてはやや価格は割高だが、ファイナンシャル・プランナーとしては個人的にはナンバー1ではないかと思っている萩原博子氏の著作。収入に対する貯金割合の目安は10パーセントとか住宅の頭金は20パーセント以上とか定番のセオリーに加えて、税額所得控除のコツなどだれにでも実行可能なスキルが網羅されている。医療費の10万円以上の請求書をきっちりファイルしておくと後日便利とか、大きなマクロ経済の理論を分析することももちろん大事だが家計単位でミクロな可処分所得のやりとりも当然大事。NHK受信料などは利息分も含めて前払いのほうが安いというのも頭に入れておいていいスキルではないかと思う。そしてこの本のやり方を追求していくとお、結局は「整理整頓をしっかりしておく」ということに突き当たる。必要な請求書はしっかりファイル、衣料品についても、もう着ないと思ったら捨てる前に雑巾がけなどに再利用してから捨てるとか、ヤフーオークションを利用してみるとか、いろいろな生活の知恵がこめられている。このデフレ不況のもとで、こういう豆知識、けっこう積もれば大きな意味につながっていく。
2010年11月9日火曜日
異端の大義 下巻(新潮社)
著者:楡周平 出版社:新潮社 発行年:2009年 本体価格:667円
この本を読んでいるとさまざまな実在の企業が念頭をよぎる。サンヨー、アイワ、フィリップス、NEC…といった感じになるが、国内の生産拠点の閉鎖に従事する主人公はとあることから、人事担当の役員ににらまれなれない販売子会社へ出向、さらには外資系企業に突破口を見出すが、その後運命は皮肉な展開をみせる…。おそらく10年前の日本であれば「そんなばかな話」と一笑に付されそうな話だが2010年現在の日本では、頻繁にとはいわないまでも、それなりにありうる話だろうと思う。海外でMBAを取得し、さらには語学も堪能なこの主人公であれば、年齢にかかわりなく日本市場や中国市場にターゲットをしぼる外資系がスカウトされるなんてことは十分ありうる。さらには、 国内企業が経営不振となれば、外資系が株式を購入するケースも当然想定される。日興コーディアルや日産という会社は一例に過ぎないし、中小企業であっても外資系が入り込んでくる例も散見される。この本ではインフラに疑念をもつ中国人の社員と将来の中国の発展を予測する中国人の見方の対立が面白い。おそらくは今の中国の経済発展は共産主義の限界でいずれは衰退をむかえるとは思うが…。「異端」とは同族会社に紛れ込んだ外国文化に慣れ親しむ主人公が、同族会社のなかでいつしか人情味あふれる「日本人」へと変貌していくが、それは気がつくと会社の中では「異端」になっていた…という展開を暗示している。成功物語というよりもリストラ・工場閉鎖物語という必ずしも明るい話題ではないが、逆境にあっても活路を見出したい人にはヒントがあふれているはず。
この本を読んでいるとさまざまな実在の企業が念頭をよぎる。サンヨー、アイワ、フィリップス、NEC…といった感じになるが、国内の生産拠点の閉鎖に従事する主人公はとあることから、人事担当の役員ににらまれなれない販売子会社へ出向、さらには外資系企業に突破口を見出すが、その後運命は皮肉な展開をみせる…。おそらく10年前の日本であれば「そんなばかな話」と一笑に付されそうな話だが2010年現在の日本では、頻繁にとはいわないまでも、それなりにありうる話だろうと思う。海外でMBAを取得し、さらには語学も堪能なこの主人公であれば、年齢にかかわりなく日本市場や中国市場にターゲットをしぼる外資系がスカウトされるなんてことは十分ありうる。さらには、 国内企業が経営不振となれば、外資系が株式を購入するケースも当然想定される。日興コーディアルや日産という会社は一例に過ぎないし、中小企業であっても外資系が入り込んでくる例も散見される。この本ではインフラに疑念をもつ中国人の社員と将来の中国の発展を予測する中国人の見方の対立が面白い。おそらくは今の中国の経済発展は共産主義の限界でいずれは衰退をむかえるとは思うが…。「異端」とは同族会社に紛れ込んだ外国文化に慣れ親しむ主人公が、同族会社のなかでいつしか人情味あふれる「日本人」へと変貌していくが、それは気がつくと会社の中では「異端」になっていた…という展開を暗示している。成功物語というよりもリストラ・工場閉鎖物語という必ずしも明るい話題ではないが、逆境にあっても活路を見出したい人にはヒントがあふれているはず。
2010年11月8日月曜日
ラスト・ワン・マイル(新潮社)
著者:楡周平 出版社:新潮社 発行年:2009年(文庫版) 本体価格:629円(文庫版)
単行本の発行は2006年。まだライブドアによるフジテレビ買収活動も楽天によるTBSへの買収活動も起きていない時代に、楡周平は、架空のインターネットモールが小口運送中心の運輸会社に値引き交渉をもちかけるシーンから描写していく。ネットの売買取引も最終的には実際の物流活動によって完遂される。タイトルはその売買活動の最後のリアルな活動という意味で「ラスト・ワン・マイル」となっている。経済小説ではあるが、流通や物流に興味がある読者にとっては、流通論のテキストを読むよりも現実の世界に応用できる内容が盛り込まれているほか、サーバーの維持や出店した顧客の管理などマーケティングの勉強にもつながる著述が多い。おそらく経済小説の場合、時代があまりに変化すると小説としてのエンターテイメント性が失われやすいというデメリットがあるが、著者はそうした陳腐化を避けたかったのではないか…と推察する。「一見ネガティブな情報のように見えても、その裏に隠された真実を掴んだ人間が金を手にできる」(文庫本266ページ)。ビジネス戦争の過酷な競争と人間心理、緻密なプロットが、層をなし、まるでティラミスのように、人間模様と企業のからみあいを描写している見事な経済小説。
単行本の発行は2006年。まだライブドアによるフジテレビ買収活動も楽天によるTBSへの買収活動も起きていない時代に、楡周平は、架空のインターネットモールが小口運送中心の運輸会社に値引き交渉をもちかけるシーンから描写していく。ネットの売買取引も最終的には実際の物流活動によって完遂される。タイトルはその売買活動の最後のリアルな活動という意味で「ラスト・ワン・マイル」となっている。経済小説ではあるが、流通や物流に興味がある読者にとっては、流通論のテキストを読むよりも現実の世界に応用できる内容が盛り込まれているほか、サーバーの維持や出店した顧客の管理などマーケティングの勉強にもつながる著述が多い。おそらく経済小説の場合、時代があまりに変化すると小説としてのエンターテイメント性が失われやすいというデメリットがあるが、著者はそうした陳腐化を避けたかったのではないか…と推察する。「一見ネガティブな情報のように見えても、その裏に隠された真実を掴んだ人間が金を手にできる」(文庫本266ページ)。ビジネス戦争の過酷な競争と人間心理、緻密なプロットが、層をなし、まるでティラミスのように、人間模様と企業のからみあいを描写している見事な経済小説。
2010年11月6日土曜日
悪の教典 上巻・下巻(文藝春秋)
高等学校を舞台にした「ピカレスク」ロマン。京都大学を中退して、外資系証券会社を経て教育委員会の特別制度を利用して教員となった「蓮実」が主人公。冒頭はきわめて普通の日常生活なのだが、次第にその日常の奥底に隠された陰謀が明らかになっていく…。やや分厚い紙でしかも活字も大きい体裁のため、持ち歩いて読むには不自由するが、その分、紙面に余白が多いので余裕をもって楽に読める。文藝春秋のホームページで「学年名簿」などもダウンロードできるようになっているので、PDFをダウンロードして名簿片手に読むのも面白いかもしれない。
社会学では個人の意思決定に影響を与える集団を「準拠集団」という。これまでのピカレスクロマンでは、「準拠集団」よりも群集を取り扱うケースが多かったように思う。バルザックの「従妹ベッド」もピカレスクロマンだが特定の準拠集団に依拠しているわけではない。この小説では特定の人間関係が持続する「学校」という準拠集団のなかに、知能の高い悪者が混じりこんだらどうなるのか…と描写しているところがユニークだ。その分、もうひとつの準拠集団である「家族」や「近所」といった集団については描写は希薄。もちろん生徒の家族が登場してくる部分もあるのだが,その扱いはあくまで「学校」とのかかわりから描写される。場所は「学校」、主役は「教師」、そして犠牲者は「生徒」とその関係者という構図でPTAなどもちらっと出てくるが小説の大筋には関係してこない。しかも私立学校という設定なので、それまで主役が勤務していた都立高校とのかかわりも驚くほど希薄。結局、インターネットや偶然であった知人による「うわさ」などしか生徒の側は情報が入手できないという構図になっている。こうした準拠集団を場面設定した理由、おそらく「会社」を舞台にして同様のケースを考えると、情報がそれぞれ公開されているうえ、勤務状態などもある程度社内LANなどで共有。さらには、不自然な「うわさ」などはフォーマルな組織であればあるほど抹殺されるため、この小説のような人間関係の操作というのはまず無理。現代のさまざまな準拠集団のなかでも、「学校」という準拠集団だからこそ、完成しえた小説といえるのだろう。
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