2010年4月11日日曜日

できるかなV3(角川書店)

著者:西原理恵子 出版社:角川書店 発行年:2008年 本体価格:667円
 「ガチ」の西原ファンだったときには、新刊発行と同時に購入していた西原理恵子の本。今回は文庫本化されてから2年後に拝読。いきなり「脱税できるかな」から始まるとんでもない「第3弾」。まさかの池袋ハリウッドへのキャバレーデビューと第1弾、第2弾よりもパワーアップしている…。山田参助さんなる新たな漫画家も登場しているがこれもまた…。もっとも新刊を読まなくなったのは、『その後の事情』ってのがあらかじめファンには明らかだったからでもある…。つれーことはつれー事情ってのがあるけど、西原さんの場合にはそれをまた笑いでパワーアップして乗り越えていくあたりが立派。

シャッターアイランド(早川書房)

著者:デニス・ルヘイン 出版社:早川書房 発行年:2006年 本体価格:820円
 これからマーチン・スコセッシ監督による映画化作品が公開予定ということで2006年発行の文庫本ながら、書店では平積み状態。ただし映画のストーリーの紹介やこの本の「あおり文句」を期待して映画館にいくとおそらく失望しそうな予感も…。「フライト・プラン」でやはり同じような失望を味わったのだが、完全密室モノミステリーの場合、「フォーガットン」のように「宇宙人による多数派工作」のようなオチにするか、あるいはミッキー・ローク主演の「エンゼル・ハート」のようなオチにするか…というあたりに集約されてしまうが、この本、おそらく途中で大多数の読者は「オチ」に気がついてしまう。ただその後は「正気とは何か」といったような哲学的香りでなんとなく最後まで読んでしまうが、映画館でマーチン・スコセッシがそのあたりをどう扱っているのかが注目される(もっともストーリーってあんまりスコセッシは気にしていないのかもしれないが…)。時代設定は1950年代でちょうどマッカーシズムの嵐が吹き荒れている時代。時代背景とちょうどこの島を訪れる「連邦保安官」の心の傷が重なり合う…。

2010年4月10日土曜日

「夜のオンナ」はいくら稼ぐか?(角川書店)

著者:門倉貴史 出版社:角川出版 発行年:2006年 本体価格:686円
 やや統計データそのほかが古びてきてはいるのだがそれでも面白いこの「裏GDP」の分析。ある国への経済面での注目度が高まると文化面への興味が高まるという指摘(56ページ)など興味深い指摘が多い。統計データは待ち行列理論などを多用し、なるべく信頼度を高める努力を著者が試みようとしている姿勢も評価できる。もともと公的データが「ない」分野のため、類推や憶測に頼らざるをえない部分が多くなるのも当然だ。この本を読むとたとえば「スラムドッグ ミリオネア」(ダニー・ボイル監督)がアカデミー賞を受賞する「流れ」も当然のように思えてくる。ムンバイの映画村が「ボリウッド」と称される背景も理解できるし同時に「スラムドッグ」のラストシーンにもうなづけるものがでてくる。
 需要と供給の分析で「需要面」で「倒錯」した客が増えてきたのが価格の切り下げにつながってきているという指摘が面白い。新境地を開拓したいという需要側に対して供給側が追いつかない(あるいは多様性についていけない)という冷静な分析だが、誰もが等しく同じサービスを享受する…といった時代ではない以上、こうした「夜のビジネス」もマーケティングが必要になってきたということだろう。巻末には世界の裏ビジネスの状況の紹介や人身売買の実態なども特集されている。

フリー(NHK出版)

著者:クリス・アンダーソン 出版社:NHK出版 発行年:2009年 本体価格:1800円
 出版された瞬間に購入してそのまま「積んでおいた」。が、その後ベストセラーになりなぜか読む気がさらに失せ…。だがやはりベストセラーになるだけのことはあって、いったん読み始めるとそのままこの「フリー」の世界にはまってしまう。「R25」がなぜフリーなのにビジネスとして成立するか、SNSなどをはじめとして無料オンラインゲームがなぜゆえに収益を生み出すか。それはデジタルの場合には無限にコピーが可能であり、その無限の消費者のなかには希少価値をもとめてお金をだすユーザーがいる。99パーセントの無料ユーザーと1%の有料ユーザーによるビジネス。こういう展開は確かに1990年代には想定もできなかったが、なるほど、コンテンツさえ優良であればそれなりに顧客もまたつくという逆転の発想の世界。特にお金はあるけど時間がないというユーザーにとってはカード決済で無料ゲームのアイテムがそろえられるという「特典」は魅力的に思えるだろう。無料だから「お金はとれない」という発想ではなく、無料で複製が可能だからこそ成立するという発想はミュージシャンにも応用できるわけだが、著者は「著作権が守られても人気が得られるわけではない」という簡潔なメッセージで複製可能を肯定する。露出が激しいと人気が落ちるケースもありうるだろうが、露出が激しくCDが複製されてもコンサートやライブなどにお金を出すファンをしっかり獲得すれば、それなりにミュージシャンは利益を得られるわけだ。排他的な資源ではない、というあたりがこのデジタル資源の面白さか。

2010年4月5日月曜日

警察庁から来た男(角川春樹事務所)

著者:佐々木譲 出版社:角川春樹事務所 発行年:2008年 本体価格:629円
 北海道警シリーズ第2弾、というわけで「警察庁から来た男」藤川警視正が登場。ちょっと冷たい感じのする東大法学部卒の30代キャリアという設定。監察官として北海道県警本部を「探索」していくが、謎がとけていくきっかけは「萌え系喫茶」のボッタクリにあって殺害された一人の男だった…。フォーマル組織とインフォーマル組織の二元構造で会社は動く…というのがレスリスバーガーの経営学だったように記憶している。表向きの組織構造だけでは組織そのものは分析できない、ということで、それまでの機会人間的な組織分析の流れに一石を投じた経営学の研究だった。フォーディズムから一歩先をでた経営学の系譜からすると、「謎解き」は最初から自明なのだが、そうしたインフォーマルな組織が実際にはどう管理されているのかは謎だ。表向きの行政組織以外にも実際には同じ政治的信条、宗教的心情などいろいろ陰にはあるはずなのだが…。ということで、こういう本が売れれば売れるほど頭痛の種が増えるのが実際の北海道県警ではないかと推定。おそらく当時のトップはもう実際には入れ替わっているはずだが、このシリーズが飛ぶように売れているかぎりは「ああ、あの裏金事件の…」と言われるのはちとかわいそう。ただ映画化も間近にせまっているうえこのシリーズさらに続編がまたでてきそうな勢い…

笑う警官(角川春樹事務所)

著者:佐々木譲 出版社:角川春樹事務所 発行年:2007年 本体価格:686円
 なんと文庫版が2007年5月18日第1刷で、2009年7月6日で第40刷。で、内容ももちろん面白い。北海道警察本部を舞台にした殺人事件の捜査だが、その背後には「裏金」問題が横たわる。44歳の一匹狼的な刑事と。各部署の有志たちが自主的な捜査機関をもうけてタイムリミット内での「捜査」に走る…。「裏金」問題は、実際に発生した事件であることはつとに有名だが、それに対して「組織防衛」と「真実への追及」という二律背反の気持ちが現場にはあったはず。案外、この本を読んで「すっきりした」という北海道警察の警官も多いのではないだろうか。
 地方自治法100条に規定された100条委員会の権力の重さも伝わってくるが、いったんひとつの方向に動き始めたら方向転換はしにくい巨大ジャンボ機のような組織の弱さと、不安定ではあるものの機動性のある小さなチームの対比も面白い。運転免許証の服役期間の間は効力が失効しないなどというマメ知識も身についたりして、細かいところまで非常によくできているエンターテイメント。

2010年4月3日土曜日

おとなの男の心理学(KKベストセラーズ)

著者:香山リカ 出版社:KKベストセラーズ 発行年:2007年 本体価格:686円
 「効率性」を追求する人間と「自然体」を追及する人間が両翼に存在すると仮定すると、この本の著者はやはり「自然体」よりといえるだろう。その偏りをある程度わきまえて読み込んでいくと、やはり女性のほうが環境の変化には強く、男性のほうが環境には弱いという結論に。男性の更年期障害についてもページがさかれているのだが、案外この「更年期障害」については女性関係の本が多く男性の更年期障害の本は少ない。だからまあ、その部分だけでも読んで置くとけっこう役に立つ部分はあると思う。テストテロンの減少というホルモン要因に多くがありそうだがそれ以外にも遺伝子的要因や環境要因は当然あるだろう。ただし、著者は原因分析にはあまりこだわらず、「あるがままに」「将来をあまり心配しない」というのが一番と考えているようだ。確かに何が起こるのか将来はまったく予想が不可能。ある程度の予防措置をこうじたら、それ以降はあるがままに生きていくしかない。ただし「確実に予想しうる将来」については、健康面でも予防措置は必要だとは思うが…。「老い」を受け入れつつも、生活の質を保つ。けっこうそれって難しい。しかし難しいけれど人間は日々老いていくのだから、その対処方法についても難しい哲学的なことはヌキにして、生活レベルのこまごましたことで用意はしておきたい。家族、社会、未来へどこまで適応して自分自身と折り合いをつけるか。これ、やはり自分なりの生き方の問題に帰着すると思う。難しいテーマではあるけれど一定の年齢以上の男性はこれまでそうしたことにはまったく無関心で生きてくることができた。でもそれももう難しい時代になってきていることには気がつくべきなのだろう。