著者名;きたみりゅうじ 出版社;幻冬舎 ;出版年度;2007年
会社で一番寝やすい場所はどこか?それは座席を寄せ集めて作ったベッドである。というように非常に過酷な労働環境の中から生み出されてきたサバイバルノウハウが公開されている「裏のビジネス書籍」。可愛いイラストも筆者によるものだが、イラストのカワイさとは反比例して内容はどんどん過酷になっていく。特に「働くほど貧乏になる」法則の話は涙なしには読めない。またプロジェクトマネージャーという立場の重さと「人月」という独特の加工進捗度の矛盾には結構シビアな問題がある。コーディングやプログラミングはやはり相当細かい作業であるわけで「他人のコードを信じるな、自分のコードはもっと信じるな」というような品質管理の厳しさにはソフトもハードも関係ない。46版の若き、そして厳しきソフトウェア開発の現場のノンフィクションストーリー。
かなりいろいろな分野の書籍を読みますが、まずはビジネス関連書籍を中心に…なお個人的な☆印ですのであまり御参考にはなさらず…自分の好きな本を読んで好きなように活用していただく一助になればと思います。現在合計で2143冊の書籍についてアップロードしています_¢(0-0ヘ)。そろそろ「タグ」をまめにつけて整理していこうかな、と考えています。順不同ですがそのうちに分類基準を決めていきます【^_^】 「濫読」ではあるのですが、定期的に 1.民法・会社法 2.財務会計 3.近代経済学 4.流通・マーケティング 5.世界史関係 の書籍は読むようにしています。
2008年2月24日日曜日
キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか
著者名;北尾トロ 出版社;幻冬舎 出版年度;2007年
「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」…普通は言えない。が、この人は言ってしまう。しかもそれ以外の「普通は言えんだろ」ということまでバンバン言ってしまう。読みながら実は途中、「引いて」しまい、「頼むから言わないで欲しい」「言わないでくれ」と拝むような気持ちになってしまうほど言いにくいことを言ってしまう。まあ、たとえば「電車で知らないオヤジに話しかけ飲みに誘う」とか「GWのお台場で孤独な男たちと人生を語り合う」とか「電車でマナーを守らぬ乗客を叱り飛ばす」とか「激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する」とか目次を読み返しているだけでも冷や汗が流れてくるのだが、これを筆者一流のドキュメンタリータッチで描写してしまうのでまるで自分が本当に「味の悪さ」を飲食店で指摘したり、「電車の中」で注意するような緊張感が漂う。正直、真夜中近くの金曜日の繁華街などで「こんな時間になぜ男一人」と思うようなことはあるが、実際にその素性や理由を聞いてみようという気持ちにはならない。というよりもなれない。しかしそこをあえて北尾トロ氏は踏み込んでしまう。尊敬する「えのきどいちろう」さんが「人生のどうにも引き返せない地点」と題した解説を書かれてらっしゃるが、「そういえばもうオレもストリート・オブ・ノー・リターンなんだな…」とかふとうなづいてしまう「強引さ」もこの本にはある。えのきどさんは「瑞々しい完成」と表現されておられるが、感性というよりも勇気なんだろうなあ。だって自分が10代のときだって、電車の中で見ず知らずの他人に話しかけようとは思わなかったし。実際、えのきどさんも「中年男が長年、出さずにいた勇気を出す」と表現されているし。
ただ正直、辛い「ルポ」の「集合体」みたいな本にあって、ほろっと「泣き」が入るようないいエピソードも混じっており(というか混じってなければ商業書籍としてはいかがなものか、という声もでてくるのではないかと思われるが)、文庫でいえば150ページあたりのエピソードや著者自身の解説と「センチメンタルジャーニー」と題した一連の中でも219ページ以降はかなり泣ける。一番寒いのが189ページあたりで、これは「人前で自作の詩を朗読する」という企画で、ご丁寧に著者が朗読したという自作の詩が1ページ全部をとって掲載されている。総ページ308ページという大企画の文庫本で、このページでのエピソードの配列はさすがに一流出版社の編集技術を感じさせる。奥付では平成18年6月10日発売で同年12月15日で4刷という売れ行きで、「いいたくないけどいわなきゃなんね」「引き返せないけど引き返していいたい」という人間の「暗黙の欲求」を現実化したノンフィクションルポの「一角」といえようか。「スキマ産業」としては、今後さらに拡大の余地がかなりありそうな分野での注目作品…。
「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」…普通は言えない。が、この人は言ってしまう。しかもそれ以外の「普通は言えんだろ」ということまでバンバン言ってしまう。読みながら実は途中、「引いて」しまい、「頼むから言わないで欲しい」「言わないでくれ」と拝むような気持ちになってしまうほど言いにくいことを言ってしまう。まあ、たとえば「電車で知らないオヤジに話しかけ飲みに誘う」とか「GWのお台場で孤独な男たちと人生を語り合う」とか「電車でマナーを守らぬ乗客を叱り飛ばす」とか「激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する」とか目次を読み返しているだけでも冷や汗が流れてくるのだが、これを筆者一流のドキュメンタリータッチで描写してしまうのでまるで自分が本当に「味の悪さ」を飲食店で指摘したり、「電車の中」で注意するような緊張感が漂う。正直、真夜中近くの金曜日の繁華街などで「こんな時間になぜ男一人」と思うようなことはあるが、実際にその素性や理由を聞いてみようという気持ちにはならない。というよりもなれない。しかしそこをあえて北尾トロ氏は踏み込んでしまう。尊敬する「えのきどいちろう」さんが「人生のどうにも引き返せない地点」と題した解説を書かれてらっしゃるが、「そういえばもうオレもストリート・オブ・ノー・リターンなんだな…」とかふとうなづいてしまう「強引さ」もこの本にはある。えのきどさんは「瑞々しい完成」と表現されておられるが、感性というよりも勇気なんだろうなあ。だって自分が10代のときだって、電車の中で見ず知らずの他人に話しかけようとは思わなかったし。実際、えのきどさんも「中年男が長年、出さずにいた勇気を出す」と表現されているし。
ただ正直、辛い「ルポ」の「集合体」みたいな本にあって、ほろっと「泣き」が入るようないいエピソードも混じっており(というか混じってなければ商業書籍としてはいかがなものか、という声もでてくるのではないかと思われるが)、文庫でいえば150ページあたりのエピソードや著者自身の解説と「センチメンタルジャーニー」と題した一連の中でも219ページ以降はかなり泣ける。一番寒いのが189ページあたりで、これは「人前で自作の詩を朗読する」という企画で、ご丁寧に著者が朗読したという自作の詩が1ページ全部をとって掲載されている。総ページ308ページという大企画の文庫本で、このページでのエピソードの配列はさすがに一流出版社の編集技術を感じさせる。奥付では平成18年6月10日発売で同年12月15日で4刷という売れ行きで、「いいたくないけどいわなきゃなんね」「引き返せないけど引き返していいたい」という人間の「暗黙の欲求」を現実化したノンフィクションルポの「一角」といえようか。「スキマ産業」としては、今後さらに拡大の余地がかなりありそうな分野での注目作品…。
2008年2月23日土曜日
世界のとんでも法律集
著者名;盛田則夫 出版社;中央公論新社 出版年度;2007年
正確には「法律」に限定されず条令や法典なども含む「一見奇想天外な法令」と著者のコメントが見開きで掲載されている。テレビの報道で一回見たことがあるトルクメニスタンのとんでもない気まぐれな法律がトップを飾り、インドの戸籍法やマヌ法典、イスラム法典まで内容は広がっていく。サウジアラビアではポケットモンスターのカードを持ち込んではいけないとか、犬とネコを一緒に飼ってはいけないというユタ州の州法とか非常に面白い。ただおそらく地域特有のなにかしらの必要性があって公布・施行されたものであろうことは察しがつくし、著者も解説を丁寧に加えている。インドの樹木婚という「ならわし」や2007年夏の時点で世界最速のネット回線を保有しているのは、スウェーデン在住の75歳の方で、1秒に40Gビットのやりとりができる超高速光ファイバーの保有者だとか、いろいろ法律に関係ない雑学まで紹介してくれているので、「法律」になじみが薄いとか「なじめない」という方々にもお勧め。もっとも、「法律」の難しさは文化や慣習にも関係があると同時に「社会システム」の問題もでてくるので、「面白い」とばかりもいえない側面があるのも事実。「法治国家だから…」「近代国家だから…」という「理屈」のほかにも難しい側面が多数あり、それは著者のコメントの端々からもかなり考えたのではなかろうか…という苦渋の表現があるようにも見受けられる。
正確には「法律」に限定されず条令や法典なども含む「一見奇想天外な法令」と著者のコメントが見開きで掲載されている。テレビの報道で一回見たことがあるトルクメニスタンのとんでもない気まぐれな法律がトップを飾り、インドの戸籍法やマヌ法典、イスラム法典まで内容は広がっていく。サウジアラビアではポケットモンスターのカードを持ち込んではいけないとか、犬とネコを一緒に飼ってはいけないというユタ州の州法とか非常に面白い。ただおそらく地域特有のなにかしらの必要性があって公布・施行されたものであろうことは察しがつくし、著者も解説を丁寧に加えている。インドの樹木婚という「ならわし」や2007年夏の時点で世界最速のネット回線を保有しているのは、スウェーデン在住の75歳の方で、1秒に40Gビットのやりとりができる超高速光ファイバーの保有者だとか、いろいろ法律に関係ない雑学まで紹介してくれているので、「法律」になじみが薄いとか「なじめない」という方々にもお勧め。もっとも、「法律」の難しさは文化や慣習にも関係があると同時に「社会システム」の問題もでてくるので、「面白い」とばかりもいえない側面があるのも事実。「法治国家だから…」「近代国家だから…」という「理屈」のほかにも難しい側面が多数あり、それは著者のコメントの端々からもかなり考えたのではなかろうか…という苦渋の表現があるようにも見受けられる。
2008年2月17日日曜日
ビジネス法則の落とし穴
著者名;東谷暁 出版社;学習研究社 出版年度;2007年
ロングテール現象やウェブ2.0などの「ビジネス法則」が新しいものでもなく、過去のビジネス法則の焼き直しもしくは環境によっては成立しないことを実証・検討した新書。「先に市場を占有したものがその後も市場を占有しつづける」(マタイの法則)などの「半ば常識」となっている原則を検証。個人的にはランチェスター法則がスーパーマーケットの出店の背後にあったというくだりが面白かった。消費者の嗜好の固定の例としてキューピーマヨネーズがあげられているのも興味深い。結局、法則とはいっても最終的にはビジネス環境による、あるいは時代性による、ということが結論になるのだが、独占的ポジションにあるメーカーなどが凋落していく原理を推察していくのには非常に面白い新書サイズの経済書籍である。ニッチを占める企業がいかにして「勝利」していくのか、といった個人的な興味にも非常にヒントになった一冊だ。
ロングテール現象やウェブ2.0などの「ビジネス法則」が新しいものでもなく、過去のビジネス法則の焼き直しもしくは環境によっては成立しないことを実証・検討した新書。「先に市場を占有したものがその後も市場を占有しつづける」(マタイの法則)などの「半ば常識」となっている原則を検証。個人的にはランチェスター法則がスーパーマーケットの出店の背後にあったというくだりが面白かった。消費者の嗜好の固定の例としてキューピーマヨネーズがあげられているのも興味深い。結局、法則とはいっても最終的にはビジネス環境による、あるいは時代性による、ということが結論になるのだが、独占的ポジションにあるメーカーなどが凋落していく原理を推察していくのには非常に面白い新書サイズの経済書籍である。ニッチを占める企業がいかにして「勝利」していくのか、といった個人的な興味にも非常にヒントになった一冊だ。
2008年2月4日月曜日
ビジネスの文章・メモ・整理
出版社;インフォレスト株式会社 出版年;2007年
シンクタンクの研究者や経営コンサルタントの方などの情報整理術の紹介。価格は980円。どちらかといえば元レーサーの丸山浩さんの「道具」に対するこだわりや使った道具は元に戻すという基本の中の基本が事故を未然に防ぐ方法として意識に残る。ネジ一本でも床に残っていた場合にはそれはどこかにあるべきだったネジが回っていないことを意味するわけだし。「掃除は現場で絶対に必要な仕事」という一言が重い。掃除の重要性はサイクルショップ経営の永井隆正さんも同じことをおっしゃっている。ビジネスツールやモバイルギアなどのカタログめいたものも掲載されていたが、デジタル機器よりもやはりアナログ機器で事故防止につながる心がけが究極の「整理」であることをこの本を読んで思う。最後に編集スタッフの方々がローマ字書きではあるが顔写真入りでコメントを掲載している。「いい加減な本は作らない。もしいい加減な本だったらそれは私たちの責任です」という意思表示に思えて非常に好ましい。
シンクタンクの研究者や経営コンサルタントの方などの情報整理術の紹介。価格は980円。どちらかといえば元レーサーの丸山浩さんの「道具」に対するこだわりや使った道具は元に戻すという基本の中の基本が事故を未然に防ぐ方法として意識に残る。ネジ一本でも床に残っていた場合にはそれはどこかにあるべきだったネジが回っていないことを意味するわけだし。「掃除は現場で絶対に必要な仕事」という一言が重い。掃除の重要性はサイクルショップ経営の永井隆正さんも同じことをおっしゃっている。ビジネスツールやモバイルギアなどのカタログめいたものも掲載されていたが、デジタル機器よりもやはりアナログ機器で事故防止につながる心がけが究極の「整理」であることをこの本を読んで思う。最後に編集スタッフの方々がローマ字書きではあるが顔写真入りでコメントを掲載している。「いい加減な本は作らない。もしいい加減な本だったらそれは私たちの責任です」という意思表示に思えて非常に好ましい。
2008年2月3日日曜日
エッセンス簿記会計第4版
出版社;森山書店 著者名;新田忠誓 発行年;2007年4月10日
総勢13人の著者による個性的な簿記会計の入門書。社団法人全国経理協会推薦図書である。営業資産(事業資産か?)の説明に比重が置かれており、無形固定資産や純資産の部についてはあまり説明がないというのも個性的だ。第6章では三分法の説明が中心だが、その後に分記法と総記法の説明があるのが面白い。通常入門段階で分記法か三分法か、といった議論はあるが、そうした「低次元」(?)の水準をこえて総記法にまで踏み込むあたりが高いレベルをめざした入門書であることがわかる。
第2章の用語集は便利(13ページ~25ページ)。そしてそと38ページでいきなり(繰延資産として計上した)「創立費」の償却が出てくる。この段階で読む読者層は日商3級はクリアしている層に「限定」されてくるような印象を受ける。帳簿についてはかなり実務的な細かい説明がありこれは非常に好ましい。コンピュータ会計が進んだとはいえ、帳簿の見出し行は上は複線、下は単線、金額欄は縦の複線で区切り、逆にいうと縦の複線で区切られた数字は「金額」という意味と読み手には判断できる。金額の合計あるいは差額についても単線で上を区切り、その計算が終了したときには二重線を引く(55ページ)という説明はこの時代だから重要で入門書には必須の知識だと思う。
帳簿組織の部分はA5判型なのだが拡大コピーするなど読者の側でもいろいろ創意工夫する必要があるだろう。
株主資本等変動計算書はあっさり3ページで、しかも繰越利益剰余金を配当原資とした配当金や配当平均積立金を処分する練習問題も興味深い(281ページ)。売買目的有価証券評価益勘定など勘定科目レベルですでに独特なのだが、これも一種の「なれ」かもしれない。教育目的などいろいろなお考えのもとだとは思うが、会社計算規則その他の勘定科目(表示)との整合性はこれからの課題になるだろう。特に勘定科目には帳簿組織を構成する上でどうしても長さはなるべく簡潔にしたほうが良いという面もある。11文字の勘定科目では帳簿記入やリーダビリティの問題を考慮するとさらに改善されるべき論点が多く提出されていると思われる。
p.103で割賦未収金という勘定科目が使用されていておもわずニヤリ。商品の売買以外の代金の後払い(代金請求権)にのみ未収金勘定を用いるという原則に反する反論が何某早稲田大学教授の書籍で読んでばかりのことで…。とはいえ基本に忠実な著述も多く「同一取引同一仕訳の原則」(同じ現象について同じ勘定科目を用いるべきという原則)についても言及されており、割賦未収金勘定も正常営業循環基準に含まれている存在だから、貸借対照表に開示されるときには未収金で処理して売掛金に含めて開示されるということかもしれない、
第9章では納税申告書の書き方が設定され、本支店会計は第17章の利益の処分と損失の処理の後に「補章」として設定されているのもユニーク。204ページでは有価証券の差し入れ、収益の見越し・繰り延べの説明のあとに有価証券の売買活動が説明されているのも個性的だが「個性」というよりももう少し配列に気を使わないと入門者では全部とトータルの流れで理解するのは難しい本かもしれない。なにせ「有価証券運用損益」勘定は「投資の成果をまとめて示すために」統制勘定として用いるという説明は概念フレームワークをふまえたきわめて簡潔にして優れた説明だとは思うが「投資の成果」というキーワードが概念フレームワークに由来する言葉であることをどれだけの読者が理解できているかどうか。
228ページの合計試算表の役割の意義についてはかなり分かりやすく説明。貸借一致を確認するだけでなく仕訳帳の借方・貸方合計金額と試算表の借方合計・貸方合計金額との一致を確認するという作業は仕訳がまるまる1つか2つ抜けているか抜けていないかを確認するのに有意義だし、ここをしっかりおさえておくと特殊仕訳帳制度で二重転記の問題点や二重仕訳金額控除の重要性が伝わるというものだ。合計試算表の機能自体は特殊仕訳帳制度にも通じる面があるということでこの2つのリンクを指摘するテキストがもっと出版されてもいいだろう。また残高試算表についても通り一遍の説明だけでなく精算表作成のための準備になるという積極的役割も明示されているのが好ましい。合計試算表にも残高試算表にもそれぞれ役割があるのでそれぞれの積極的意義をもう少し強調しても良かったかもしれない。
決算整理の最終的な目的を損益勘定と残高勘定の作成という定義づけ(229ページ)もコンパクトでしかも積極的意義で非常に好ましい。こうしたシンプルでなおかつ積極的な意義はもっとこれからの改訂版で推し進めて欲しい文章である。
第16章の「帳簿組織と伝票」はかなりコンパクトに伝票と帳簿組織についてまとめてあり、この本の中では限られたページ数を最大限に活用した優れた内容である。仕訳日計表にして「一定期間の伝票を勘定科目別」に「集計して合計転記」とメリハリのある説明。さらに仕訳日計表から総勘定元帳への転記で仕丁欄には勘定口座の番号を記入し、総勘定元帳の元帳欄には仕訳日計表のページ数を記入し摘要欄には「日計表」の名称を記入するなど伝票制度の解答に当たっては必要な知識が網羅されている。また2つ以上の伝票を使用する場合には取引を分割して起票する方法があるが、仕入れを買掛金と現金の両方で分割起票した場合、仕入れが2回行われたかのような誤解を与えるという指摘がなされ、仕入れをすべて買掛金で仕入れして、あとで買掛金を現金で決済する方式の起票を進めている(いわゆる取引を偽装する伝票処理)。その流れから5伝票制度の説明で仕入伝票や売上伝票について相手勘定科目を記入しないで済む理由もすんなり頭に入ってくるという見事な構成だ(売上伝票や仕入伝票は掛取引を前提としているので)。仕入伝票からは仕入勘定と買掛金勘定、売上伝票からは売掛金勘定にしか転記されないというくだりがあるがこれにも原則論としてならばわかりやすい原理を紹介していることで納得(例外的な取引は常に存在すると思うが…)。
繰越利益剰余金と損益計算書そして残高勘定もしくは繰越試算表などとの関係についてのわかりやすい説明があればよかった。今後さらにバージョンアップしていくらしいのでさらに期待。
総勢13人の著者による個性的な簿記会計の入門書。社団法人全国経理協会推薦図書である。営業資産(事業資産か?)の説明に比重が置かれており、無形固定資産や純資産の部についてはあまり説明がないというのも個性的だ。第6章では三分法の説明が中心だが、その後に分記法と総記法の説明があるのが面白い。通常入門段階で分記法か三分法か、といった議論はあるが、そうした「低次元」(?)の水準をこえて総記法にまで踏み込むあたりが高いレベルをめざした入門書であることがわかる。
第2章の用語集は便利(13ページ~25ページ)。そしてそと38ページでいきなり(繰延資産として計上した)「創立費」の償却が出てくる。この段階で読む読者層は日商3級はクリアしている層に「限定」されてくるような印象を受ける。帳簿についてはかなり実務的な細かい説明がありこれは非常に好ましい。コンピュータ会計が進んだとはいえ、帳簿の見出し行は上は複線、下は単線、金額欄は縦の複線で区切り、逆にいうと縦の複線で区切られた数字は「金額」という意味と読み手には判断できる。金額の合計あるいは差額についても単線で上を区切り、その計算が終了したときには二重線を引く(55ページ)という説明はこの時代だから重要で入門書には必須の知識だと思う。
帳簿組織の部分はA5判型なのだが拡大コピーするなど読者の側でもいろいろ創意工夫する必要があるだろう。
株主資本等変動計算書はあっさり3ページで、しかも繰越利益剰余金を配当原資とした配当金や配当平均積立金を処分する練習問題も興味深い(281ページ)。売買目的有価証券評価益勘定など勘定科目レベルですでに独特なのだが、これも一種の「なれ」かもしれない。教育目的などいろいろなお考えのもとだとは思うが、会社計算規則その他の勘定科目(表示)との整合性はこれからの課題になるだろう。特に勘定科目には帳簿組織を構成する上でどうしても長さはなるべく簡潔にしたほうが良いという面もある。11文字の勘定科目では帳簿記入やリーダビリティの問題を考慮するとさらに改善されるべき論点が多く提出されていると思われる。
p.103で割賦未収金という勘定科目が使用されていておもわずニヤリ。商品の売買以外の代金の後払い(代金請求権)にのみ未収金勘定を用いるという原則に反する反論が何某早稲田大学教授の書籍で読んでばかりのことで…。とはいえ基本に忠実な著述も多く「同一取引同一仕訳の原則」(同じ現象について同じ勘定科目を用いるべきという原則)についても言及されており、割賦未収金勘定も正常営業循環基準に含まれている存在だから、貸借対照表に開示されるときには未収金で処理して売掛金に含めて開示されるということかもしれない、
第9章では納税申告書の書き方が設定され、本支店会計は第17章の利益の処分と損失の処理の後に「補章」として設定されているのもユニーク。204ページでは有価証券の差し入れ、収益の見越し・繰り延べの説明のあとに有価証券の売買活動が説明されているのも個性的だが「個性」というよりももう少し配列に気を使わないと入門者では全部とトータルの流れで理解するのは難しい本かもしれない。なにせ「有価証券運用損益」勘定は「投資の成果をまとめて示すために」統制勘定として用いるという説明は概念フレームワークをふまえたきわめて簡潔にして優れた説明だとは思うが「投資の成果」というキーワードが概念フレームワークに由来する言葉であることをどれだけの読者が理解できているかどうか。
228ページの合計試算表の役割の意義についてはかなり分かりやすく説明。貸借一致を確認するだけでなく仕訳帳の借方・貸方合計金額と試算表の借方合計・貸方合計金額との一致を確認するという作業は仕訳がまるまる1つか2つ抜けているか抜けていないかを確認するのに有意義だし、ここをしっかりおさえておくと特殊仕訳帳制度で二重転記の問題点や二重仕訳金額控除の重要性が伝わるというものだ。合計試算表の機能自体は特殊仕訳帳制度にも通じる面があるということでこの2つのリンクを指摘するテキストがもっと出版されてもいいだろう。また残高試算表についても通り一遍の説明だけでなく精算表作成のための準備になるという積極的役割も明示されているのが好ましい。合計試算表にも残高試算表にもそれぞれ役割があるのでそれぞれの積極的意義をもう少し強調しても良かったかもしれない。
決算整理の最終的な目的を損益勘定と残高勘定の作成という定義づけ(229ページ)もコンパクトでしかも積極的意義で非常に好ましい。こうしたシンプルでなおかつ積極的な意義はもっとこれからの改訂版で推し進めて欲しい文章である。
第16章の「帳簿組織と伝票」はかなりコンパクトに伝票と帳簿組織についてまとめてあり、この本の中では限られたページ数を最大限に活用した優れた内容である。仕訳日計表にして「一定期間の伝票を勘定科目別」に「集計して合計転記」とメリハリのある説明。さらに仕訳日計表から総勘定元帳への転記で仕丁欄には勘定口座の番号を記入し、総勘定元帳の元帳欄には仕訳日計表のページ数を記入し摘要欄には「日計表」の名称を記入するなど伝票制度の解答に当たっては必要な知識が網羅されている。また2つ以上の伝票を使用する場合には取引を分割して起票する方法があるが、仕入れを買掛金と現金の両方で分割起票した場合、仕入れが2回行われたかのような誤解を与えるという指摘がなされ、仕入れをすべて買掛金で仕入れして、あとで買掛金を現金で決済する方式の起票を進めている(いわゆる取引を偽装する伝票処理)。その流れから5伝票制度の説明で仕入伝票や売上伝票について相手勘定科目を記入しないで済む理由もすんなり頭に入ってくるという見事な構成だ(売上伝票や仕入伝票は掛取引を前提としているので)。仕入伝票からは仕入勘定と買掛金勘定、売上伝票からは売掛金勘定にしか転記されないというくだりがあるがこれにも原則論としてならばわかりやすい原理を紹介していることで納得(例外的な取引は常に存在すると思うが…)。
繰越利益剰余金と損益計算書そして残高勘定もしくは繰越試算表などとの関係についてのわかりやすい説明があればよかった。今後さらにバージョンアップしていくらしいのでさらに期待。
手帳進化論
著者名;舘神龍彦 出版社;PHP新書 出版年;2007年
いろいろな有名人が出版した手帳やメモ、そしてメモに関する一種のガイダンスブックなども含めて解説。現代の手帳の原型は1862年に福沢諭吉が渡欧。パリの文具店で購入して持ち帰ってきたのがはじめて日本に手帳が伝来した瞬間であるという。その17年度に「懐中日記」が発行されるがその間にあった1872年の日本への太政官布告の太陽暦の導入が手帳の歴史にとって重要と指摘している。懐中日記、そしてそれに続く軍隊手帳、さらには会社がかつて出していたいろいろな手帳に共通するものとして手帳が共同体の帰属感覚を生じさせるものであることを明らかにしていく。手帳のスクラップ機能やいろいろな付属物なども確かに面白いのだが、文化的・歴史的に日本の手帳ブームを解読しようとした新書として印象深い。
いろいろな有名人が出版した手帳やメモ、そしてメモに関する一種のガイダンスブックなども含めて解説。現代の手帳の原型は1862年に福沢諭吉が渡欧。パリの文具店で購入して持ち帰ってきたのがはじめて日本に手帳が伝来した瞬間であるという。その17年度に「懐中日記」が発行されるがその間にあった1872年の日本への太政官布告の太陽暦の導入が手帳の歴史にとって重要と指摘している。懐中日記、そしてそれに続く軍隊手帳、さらには会社がかつて出していたいろいろな手帳に共通するものとして手帳が共同体の帰属感覚を生じさせるものであることを明らかにしていく。手帳のスクラップ機能やいろいろな付属物なども確かに面白いのだが、文化的・歴史的に日本の手帳ブームを解読しようとした新書として印象深い。
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