2007年9月30日日曜日

霞町物語

著者名;浅田次郎 発行年(西暦);2000 出版社;講談社
 地上げなどがまだ始まる前の昭和の高度経済成長期の麻布周辺。おそらくはこうした青春群像を今の50代から60代前半は抱えていただのだろうなあと想像させてくれる筆の力はさすがに直木賞作家。でもちょっとこの世界に入れなかったのはどことなくやはりハイソサエティな感じが今のヒルズ族と通じるものがあるからかなあ…。恋に遊びにと必死に生きている十代後半の男の子の話としてはちょっと美化されすぎている気もする。とはいえ「老い」や「死」、そして父親から息子への「継承」といった日本人をなかせるツボも満載の短編集。文庫本で読む分にはまだいいのかも。

重大事件に学ぶ「危機管理」

著者名 ;佐々淳行 発行年(西暦);2004 出版社;文藝春秋
 危機管理という概念を世に広めたのはまさしくこの人。後藤田正晴という人がいかにすごい人だったのかはこの本を読むと非常によくわかる。カミソリといわれた内務省出身の天才ぶりがそのかつての部下のこの著書からうかがわれる。特に三宅島噴火時の采配ぶりの描写は圧巻だ。危機寸前にリーダーシップがとれる人間はこういう発想や行動原理をとるのかと感じた。著者自身の一種の「諧謔」というか「自慢話」というか、一種の「癖」がかいまみえるのにはちょっと辟易するが、時代が悪いときには「フォロー・ミー」景気がいいときには「アフター・ユー」がリーダーシップの原理原則ととく姿勢には共感できる。またメジャーなマスコミでは取り上げられることがなかった神戸の大震災のときの日本銀行員について「歴史を勉強していた男ゆえの手さばき」という章でかなりの分量でほめたたえている。日本銀行自体、リベラルな雰囲気で個人的にはそれほど悪いイメージがもともとない組織なのだが、すったもんだのすえにこの方は調査役として日本銀行内で昇進したところまで描写。良くも悪くも良識派と呼ばれる人間をつぶしにかかる組織よりはやはりかなりいい雰囲気の中央銀行なのではとかえって思ったりも。危機に陥る前にできることはないか、と現代に生きる人間に多種多様なエピソードで問題点を呈示。しゃれたフレーズと固い文章が魅力的な文庫本。読んで少なくとも損をすることはないだろう。

できる人の書斎術

著者名 ;西山昭彦・中塚千恵 発行年(西暦);2005  出版社;新潮社
 書斎作りのポイントを新書で紹介してくれている。最後のほうには一般論が述べられているのだが前半のビジネスパーソンや家庭の主婦の方々の書斎作成のノウハウのほうが面白い。和風の窓に板を一本かけてそこを書斎にしてウェブの運営やお手紙を書かれる場所にしている方など、「場所や気持ちの持ちよう」という部分と、照明や暖房や冷房の重要さも認識。たしかに気温で「やる気」が左右される部分は人間にとっては大きい。

困った上司、はた迷惑な部下~組織にはびこるパーソナリティ障害~

著者名 ;矢幡 洋 発行年(西暦);2007  出版社;PHP新書
 「自己愛性性格」…ア、このタイプの人がいると確かに組織ってうまくいかない…というような身近な会社の人間をいくつかのカテゴリーに分けて対策編までついているというお得な内容。「上司の場合は尊大な雰囲気、部下の場合には大口をたたいて自分の魅力をアピール」といった自己愛性性格の人。けっこう多いから困ってしまうのだが、たまにおめにかかる「サディズムタイプ」の人っていうのも確かに困り者で…。ただあんまり詳しく読後感などを記載できないのが残念ではあるが、「お役たち度」150パーセントの内容。著者は数々の病院などで苦労を重ねてきた心理カウンセラーで内容的には学術的な裏づけがあってのもの。

「新中流」の時代~ポスト階層分化社会を探る~

著者名;和田秀樹 発行年(西暦);2006 出版社;中央公論新社
 「一人の天才がいても総合力には勝てない」。テーマはこれに尽きるのだろう。ビル・ゲイツが一人いる組織よりも平凡な人間が結束した組織のほうが強かったりする。新中流階層をいかにして厚くしていくか、という方策とその効果を探った本。機会の平等はこれからますます増していくが、その分、生まれた家庭の所得や資産で階層が固定化し、ひいては社会が固定化してしまうというのを筆者はうれえているようだ。
 実際のところ家計の「固定費」はこれからさらに増す。まず所得税の定率減税は2007年から廃止。さらに所得税から住民税へ税源移譲が行われ、住民税の税率は10パーセントへ上昇。厚生年金保険料や健康保険料も軒並み上昇するが、健康保険料の標準報酬の上限は98万円から121万円にアップ。こうした固定費がかさめばかさむほど実は、可処分所得は減少していくため、消費構造としては、可処分所得が多い家計ほど消費量は多くなるが多くの家計にとっては、消費の減少要因となる。将来が不鮮明な場合には消費や投資は抑制するのが普通だろう。したがって、今後、大きな消費支出をともなう行動は普通の家計はとらなくなるはず。となるとやはり景気は一定レベルで抑制されることになる。
 大規模支出を控えるということは住宅消費支出も抑制されるだろう…ということに当然なる。公共投資や住宅開発が昔ほど景気に与える影響度が低くなったのは、ひとえに「購買層」が限定されてきたことによると思う。
 アメリカ型の市場主義が妙な形で定着した場合のことを想定すると、一握りの高い所得層の消費によってのみ支えられるいびつな日本社会の出現ということもあながちうがった見方ではないだろう。階層社会か中流社会か。2007年が分岐点になるのだとすれば、セーフティネットや税制の問題など「再チャレンジ」にふさわしいインフラがなされなければならないのだ、とこの本を読んで思う。

〈勝負脳〉の鍛え方

著者名 ;林成之 発行年(西暦);2006 出版社;講談社現代新書
 いろいろな節目節目には「ああ、勝負時だな」と思うことがある。そんなときに大事なのが「勝負脳」という一種のメンタルトレーニングの要素だ、というのが著者の主張で具体的なエピソードが満載。「意識の二構成理論」という用語で外意識と内意識の両方が人間にはあるという仮説を展開。バッターが実際にはみえるはずがない球を打てるのもイメージ記憶の一種と断定する。記憶と心は連動しているというもジュレータ理論も面白い。成功するイメージ記憶というのも「できるだけ陽気にふるまう、他人に好意的にふるまう、そうありたいと思っている自分になったつもりで行動する、悲観的なことは考えない…といった習慣付け」が大事とされているが、感覚的にも納得はできる。
①目的と目標を明確にする
②目標達成の具体的な方法を明らかにして実行する
③目的を達成するまでその実行を中止しない。
「相手の攻撃はチャンス」「相手の長所を打ち砕け」「相手の立場にたつ」、「運動知能も表現知能の一つ」といった非常に有用な理論とテクニカルな話が満載。

「仮説力」のすすめ

著者名 ;和田秀樹 発行年(西暦) ;2007 出版社;アスコム
 仮説の種になる発想のヒントをいかにつかむか、という書籍。周りを観察して、素朴な疑問を大事にし、なんでも自分の仕事に関係づけてみる。さらにいろいろな人の立場で物事をみてみるなど具体的なアイデアが満載。ただしこの立場をかえて物事をみる、というのが非常に難しいことではあるのだが。1つの問題に対して複数の解答を用意するなど現実的な対応というのは確かに大事なのだが、その訓練をいかにつんでいくのか、というのは難しい。情報を集めてもそれを実際に使って整理しなければ知識にならないというのは同感。というよりも「情報を整理」するだけでもかなりの「知識」が身につくというのは実は最近実感しているところ。文房具やノート、メモなどを場所を決めたり、情報の整理方法を考えたりといった工夫をするだけで、自分自身の行動原理がだいぶ改善されてくるのがわかる。情報を整理するのが第一段階で、その次が情報を加工するというアウトプットになるのだろう。このインプット・アウトプットの流れをいかにスムースにして仮説を立案していくか、検証していくかがポイントになるのだと思う。